親力集中講義

第43回 本当の厳しさとは常に自分自身に向けられたもの

4月に新しい担任の先生と出会ったとき、子どもたちが一番気になるのは「この先生は優しいだろうか、厳しいだろうか?」ということです。
これは、子どもたちにとって「これで自分の一年が決まる」と言っていいほどの重大事項なのです。

中には先生に直接聞こうと試みる子もいます。
つまり、初対面の先生に「先生は優しい?厳しい?」と聞くわけです。

私もあるとき聞かれました。
「先生は優しい?厳しい?」
「優しいですよ〜」
「よかった〜」
「そして、厳しいです」
「え〜、どっち?」
「優しくて厳しいです」
「え〜、どっちなの?」

多くの場合、子どもたちには「優しくて厳しい」という表現は意味がわからないようでした。
でも、これは私が常に心がけていたことです。

まず、優しさについてです。
私は次のようなことを心がけていました。

●子どもへの言葉遣いを思いやり深く穏やかに丁寧にする
●「また○○してない」「なんで○○できないの」「○○しなきゃダメでしょ」などの否定的な言い方をしない
●子どもの「○○ができない」という現実を許す
●子どもの気持ちを理解して共感する
●どの子もたくさんほめる

次に、厳しさについてです。

子どもたちの多くは、すぐ声が荒々しくなる先生、怒る先生、否定的かつ感情的に叱る先生のことを厳しい先生だと思っています。

そして、これは子どもたちに限ったことではありません。
親や先生の中にも、そうすることが厳しさだと勘違いしている人はたくさんいます。

例えば、親子で話し合って、子どもが新年の1月から日記をつけると決めたとします。
多くの場合、子どもは最初はがんばって書きます。
親もそれを読んでほめたり花丸やコメントをつけたりします。

でも、2人ともだんだん忘れるようになります。
子どもも書き忘れるようになりますし、親も見なくなります。

そして、ある日とつぜん親が思い出して叱ります。
「このごろ日記ぜんぜん書いてないじゃん。ちゃんと続けなきゃダメでしょ。三日坊主じゃ何やってもダメだよ」

でも、これはまだいい方です。
中には、まったく見届けをしないで何日もほったらかしておいて、急に思い出して叱る人もいます。

しかも、そういう人の方が言葉もさらに荒々しいという傾向があります。
「日記ぜんぜん書いてないじゃないか!決めたことを守れないなんて、そんなずるいことでどうする。あなたはいつもそうでしょ。何をやってもダメだね。情けないよ。がっかりだ」

こういうとき声を荒立てて激しい言葉で叱ることが厳しさだと勘違いしているのです。
こういう勘違いをしている親や先生はけっこういます。
でも、これは本当の厳しさとはかけ離れたものです。

本当は、子どもが日記をつけると決めたとき親も次のような決意をして実行するべきでした。

1,ぜひとも子どもが続けられるようにしてあげよう。成功させて子どもを伸ばしてあげよう。自信をつけさせてあげよう。そのために、親も最善を尽くそう
2,子どもが続けられるような環境とシステムを工夫しよう。親の見届けが続くような工夫をしよう。
3,子どものやる気が高まる声かけをしよう。

まず、1のような決意を親がすることが大切です。
そして、2のような方法の工夫と3のような言葉がけの工夫をして欲しいのです。

2について、ある人はリビングのテーブルの上にA4くらいの台をおいて、日記は常にそこに置くようにしました。
こうすれば、日記が自然に目に入り書き忘れることもなくなります。親も手にとって見やすくなります。

また、ある人は日記を見る時刻を8時30分に決めて目覚まし時計をセットしました。
百均で買った時計をそれ専用にしたところ、見忘れることがなくなったそうです。
専用時計なら目覚ましを解除したり鳴る時刻を替えたりする必要がないので、放っておいても毎日確実に鳴ってくれます。

このほかにも、ケータイのアラームをセットする方法や見届け表も効果抜群です。
見届け表とは親のがんばり表、つまりチェック表です。
子ども日記を見届けたら自分のがんばり表に丸をつけるのです。
手帳やカレンダーを利用したり、パソコンで専用の見届け表をつくったりするのもいいでしょう。

見届けとは、子どもがやったらほめ、やってなかったらやらせてほめることです。
親が見届けを毎日行えば、子どもは必ず続けられます。

3については、子どもの日記を見るときに大事なのは、ほめることとと共感することの2つです。
常に、「まずほめる。取りあえずほめる。部分をほめる」という気持ちでいてください。
どんな日記でも、まずはいい部分を見つけ出してほめることが大切です。

そして、書いてある中身に共感してあげることも大切です。
例えば、授業中におしゃべりして先生に叱られて嫌だったと書いてあったとします。
「ちゃんとお話聞かなきゃダメでしょ」などと言ったり書いたりするのでなく、その嫌な気持ちに共感してあげましょう。

ほめると共感の2つに徹すれば、子どもは楽しく書き続けることができます。

このように、1の決意のもとに、2のように方法の工夫をしたり3のように言葉がけの工夫をしたりすることが大切です。
これを親が続けていけば子どもも続けられます。
声を荒立てて叱る必要など何一つありません。

子どもが何日もやっていないことに気づいたら、親はまず自分が見届けをしていなかったことを反省するべきです。

これは、日記以外のことでも、生活習慣でも勉強でもすべてにおいて当てはまります。
中でも特に大切なのは見届けです。
子どもがやったらほめ、やってなかったらやらせてほめることです。
親がこれを継続することが本当の厳しさです。

本当の厳しさとは常に自分自身に向けられたものなのです。
それがないところで、他者に対してだけ厳しくするなどということはあり得ないことです。

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