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ゆとり世代の仕事観、その分析結果からわかること

考える力、奪ってしまっていませんか?

先月、学校法人産業能率大学が「09年度新入社員に見るゆとり世代の特徴」というレポートを発表しました。
このレポートは、今年入社した上場・非上場企業の新入社員589人(うち、21歳以下は140人)に対しておこなわれた意識調査で、21歳以下の新入社員(ゆとり教育を受けた世代)と22歳以上の新入社員(ゆとり教育以前の世代)とをくらべ、両者の「考え方の違い」を明らかにしたものです。
これから社会に入ってくる21歳以下の「ゆとり世代」とそれ以前の「非ゆとり世代」。その仕事観はどう違うのでしょうか?いくつかの分析結果がレポートで公表されていますが、私がその中でもっとも注目したのは以下の分析結果でした。

(レポートからの引用)
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■上司の仕事は「部下への指示」

上司の仕事で一番大事だと思うものについて、部下の報告を受ける、部下に指示を出す、部下からの相談にのる、という三択で聞いた質問では、「部下に指示を出す」の回答についてゆとり世代が41%ある一方、22歳以上では30%と、11ポイントの開きがあります。

一方、「部下の報告を受ける」は半分程度にとどまるなど、指示待ちの姿勢が強く感じられます。
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(ここまで)

つまり、どういうことかというと、上司の一番大事な仕事は、「部下に指示を出すことである」と考える新入社員が「ゆとり世代」を中心に増加している ということです。つまりは、(この事実を裏返すと…)「みずから考え行動できる社会人の減少」を意味しています。
この傾向は、以前から言われていることで今にはじまったことではありません。
しかし、私はこの「上司からの指示待ち層」が社会の中でより厚みを増していくのではないかと予想しているのです。そう、未だかつてない勢いで。

この“上司からの指示待ち傾向”は今後10年で、ますます顕著になっていくことが考えられます。
では、彼らをつくりだしたその原因は一体どこにあるのでしょうか・・・?

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■「指示待ち傾向」の元凶。
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上司の指示を待つ、ゆとり世代。その責任の一端は、学習塾・進学塾にあります。
塾では、ベルトコンベアのように、生徒へ、次から次へとプリントが手渡されていきます。
生徒の成績を上げるために、効率の良い手順と流れでやることが指示され、与えられるのです。
この過程の中では、子どもたちが、何を、どのように進めていくか、そこを考える余地は一切ありません。

ただただ、流れてきたプリントを消化していく──。
そして、授業が終われば自宅学習用の課題が出されます。
子どもたちは、塾の外でも何をやるのかで悩む必要はありません。

このように、「塾漬け」「指示漬け」で育ってきた子どもたちが社会に出てきたとき、彼らは何を求めるようになるのか?
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そう、「上司からの指示」を求めるようになります。
何を、どのように進めていくのか、その訓練がほとんどなかったために、社会に出てから、大変な苦労をすることになるのです。
いや、それ以前に就職活動の面接の時点で苦しい戦いを強いられるでしょう。

考える力があるかどうかは、その人の「質問の中身」で丸裸にされてしまうのですから・・・

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■仕事ができる人の質問力。
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考える力があるかどうか、もっと言えば、仕事のできる・できないは、その人の「質問の中身」を見ればおおよそ判断できるものです。

私は以前、ある派遣会社で営業所責任者をしていた時期があります。月商5,6千万の比較的大きな営業所でした。
正社員から派遣社員までを含めると250人くらいの社員を取りまとめていました。
その250人の仕事の出来・不出来は質問の中身を見ることで判断できます。
そして、それはイコール、「考える人」と「考えない人」の違いでもあるのです。

「考えない人」は常に、次のように相談をしてきます。
「先方が、○○だと言ってきたのですが、どうしましょう?」
この質問は、上司の「指示」を求める質問です。

一方、考える人は、次のように質問をしてきます。
「先方が、○○だと言ってきました。今、ここの状況は今△△なので、××をするのが良いと思うのですが・・・?」

つまり、考える人の質問は、HOW(どのように)を尋ねる質問ではなく、「提案型の質問」になっているのです。

よく、社会人になったらホウレンソウ(報告・連絡・相談)を心がけよと言われますが、本来、仕事のできる人は、報告・連絡・相談ではなく、報告・連絡・「提案」となります。
そして、この「提案」とは、その人の思考力の問題なのです。
自分の考え・意見を論理的に考え、提案として上司の判断を仰ぐ──。
このような質問力がビジネスパーソンの能力を測る指標になるのです。
考える力があるかないか、あるいは仕事ができる・できないは、その人の質問の中身を観察していればおのずと分かるものです。

もちろん、仕事のできる・できないはこの要素だけで全て測れるものではありません。
また、仕事ができればそれでいい私はそんなことを言いたいのでもありません。
考える力を身につけることで仕事上だけでなく、人生の様々な場面で、豊かな人生を創造してくれる。
そう、私は信じているのです。

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■10年間 生き続ける「生きた学力」。
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この「考える力」のように、一度身につけてしまえば、一生涯にわたって、人生を豊かにしてくれる学力・能力というものがあります。
そしてこれは10年後、お子さんが社会人になってからも大いに活躍してくれる能力です。
このように、10年後にも役立つ、本当の学力。

この学力のことを、私は、「生きた学力」と呼んでいます。
この学力こそが、今、もっとも重要な学力であると考えています。

現在、企業の寿命は10年と言われています。また、一から立ち上げた会社が10年後に生き残っている確率は3%だとも言われています。
これらの現状を考えれば、長い職業人生の中では、転職を経験しない人の方が少ないと言えるのではないでしょうか。

であれば、今の子どもたちは一体どのような学力・能力を身につけていけばいいのか。
身につけるべきは、ベルトコンベア型でトレーニングされた一時的な学力ではなく、10年後にも通用する「生きた学力」だと私は考えています。
あなたのお子さんの10年後、そこを見据えた本当の教育が、今必要になっているのです。

この「生きた学力」を育てるひとつのヒント。
それは、全国学力調査において常にトップの成績を誇る「秋田県」の取り組みにも活かされていたのです。