「百人一首」で古典入門
和歌を読んで文法を学ぼう
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瀬をはやみ岩にせかるる滝川の割れても末に逢はむとぞ思ふ
崇徳院(すとくいん)
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まず天皇の系譜を少々。この時代は、白河・堀河・鳥羽・崇徳・近衛・後白河と続きます。崇徳・近衛・後白河は3人とも鳥羽の息子です。
白河上皇は200年ぶりに院政を復活させました。堀河は7歳、鳥羽は4歳で即位し、実権は白河上皇が握っています。鳥羽が成人して扱いにくくなると、曾孫の崇徳を即位させます。面白くないのは退位させられた鳥羽院。そのうえ崇徳は白河の子だという噂までありました。
白河院が亡くなると、鳥羽上皇は崇徳を退位させ別腹の近衛を即位させます。今度は崇徳が面白くない。しかし近衛は若くして亡くなり、皇位継承でもめた末に予想外の後白河が即位します。崇徳は自分の息子を即位させたかったのですが、弟が即位することになりご立腹です。これがもとで保元の乱がはじまります。
崇徳は後白河側に負けて、讃岐は配流となり、かの地でなくなります。その後はおきまりで怨霊となりました。
<解説>
『瀬をはやみ』
川瀬の流れが速いので。「瀬」は川が浅くなっている場所で流れが速い。反意語は「淵」。「はやみ」は形容詞の語幹+接尾語「み」の用法。
『せかるる』
せきとめられる。「せか・るる」と品詞分解できる。「せか」は四段動詞「せく」の未然形。「るる」は受身の助動詞の連体形。
『滝川の』
滝川のように。「の」は連用修飾格(比喩を表す)。
『逢はむとぞ思ふ』
逢おうと思う。推量の「む」はここでは意志を表します。「逢ふ」の主語が一人称だからです。「とぞ思ふ」の係り結びは、もちろん字数調整の意味合いもあるでしょう。しかし、「…と思うんだよね」という感じの決まった言い回しだったのかも。古今集で11例、拾遺集で20例、千載集で5例「とぞ思ふ」があります。ちなみに新古今にはないみたいです。
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川瀬の流れが速いので
岩にせき止められる滝川が
別れても下流ですぐに一つの流れとなるように、
今は別れても
近い将来に逢おうと思っているのだ
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「瀬をはやみ」が直後の「岩にせかるる」にかかるとすると少しおかしい。流れが速いからせき止められる、というのは論理的に成立しません。「滝川」が比喩となるのは、流れが「われても末に逢ふ」からですね。この「われても末に逢ふ」に、「瀬をはやみ」がかかっていると考えられます。
○形容詞の語幹の用法
「…を+形容詞語幹+み」の形で「…が(形容詞)なので」となります。天智天皇の「とまをあらみ」(苫[とま]が粗いので)、源重之の「風をいたみ」(風がひどいので)など。
○格助詞「の」の連用修飾格(比喩)の用法
「の」には、主格・連体格・同格・準体格・連用修飾格の用法があります。連用修飾格は比喩を表し、「…のように」と訳します。柿本人麻呂の「しだり尾の」(しだり尾のように)がそうでした。
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