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豊かな学びは“楽しい体験”から

川の流れを感じている?

先日、学校の研修で、理科の「川の水のはたらき」の授業研究をしました。
いちばんの話題になったのは、子どもたちは川で遊んだことがあるのか、ということです。
川の水の力について学習するには、川で遊んだことがなければわからないことが、たくさんあります。

曲がりくねる水のコース、石の様子、入った時に足に感じる水流の強さ、水と共に流れていくもの、それを流す水の力…
そうしたものを肌で感じて、疑問を持ちながら、理論的に整理していくのが学習です。

ここで、問題になるのが、子どもたちは川に入ったことがあるか、ということです。

授業計画の中には、実際に近くの川に入ってみる、という時間がありますが、たった2時間ほどで、狙い通りの川の流れに出会って、そこで全員が体験できるわけはありません。
日々の暮らしの中では、学校で、近所の川遊びは危険だから禁止、なんて言っているのですから、子どもだけで川に入りに行くことは、基本的にありません。
そこから考えると、全員が豊かに学ぶというのは、基本的に無理があります。
そう、「全員」には、無理です。

でも、豊かに学べる子もいます。それは、家族で何度も川遊びに行ったことのある子です。
実は、理科に限らず、学校の勉強には、「経験をもとに…」というものがたくさんあります。
でも、子どもの実態を見ると、テレビゲームの時間は延びていますが、現場で体験している時間は、年々少なくなっています。

こんな話を他の先生方としているうちに、これは、「よい子」を読んでくれているお父さん、お母さんにはチャンスだな、と思いました。
子どものことをいつも考えていたい、と思っているお父さん、お母さんは、知らず知らずのうちに、子どもにいろいろな体験をさせていたり、子どもといっしょに何かをしていたりするからです。
こんなふうに話をすすめると、「では、急いで何かを体験させなくては」とあせっていませんか。
そのあせりは禁物です。

子どものため、というお題目で、親が無理をしてすることには、成功の可能性がありません。
うまくいくのは、親自身が楽しみにしていることを子どもといっしょにすることです。

釣りの好きなお父さんは、毎回お子さんを海や川に連れて行ってください。
山登りが好きなら、山に連れて行くだけでいいのです。
街が好きなら、街に連れて行きましょう。街の中で子どもの目と耳に入るものと、お父さんやお母さんの知識や言葉が合体した時に、子どもは、はじめて「街を経験」します。
でかけるより、家にこもって日曜大工をしていたければ、それを手伝わせればいいのです。

子どもの力を伸ばすには、身をもって体験させることが大切です。
だからといって、あわてて「○○体験スクール」のようなものに入れても、子どもの中で生きる体験はなかなかできません。
親が楽しいと思うことを、子どもといっしょに楽しむ。何度もそれを楽しく繰り返す。

それが、経験、体験として、計り知れない価値をもって、子どもの心の深いところにおちていくのです。