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誰かの“こびと”になってみませんか?

自尊心を高めるひとつの方法

日本人はセルフ・エスティーム(自尊心)が低い、と言われています。
確かに、自分のことを必要以上に低くみなしたり、過剰に卑下しすぎたりする傾向があるように思います。
自分のことを好きになれなかったり、自己嫌悪に陥ることも、割と多いのかもしれません。

以前、「自分を好きになる方法」というテーマを書いたことがありますが(第130回)、そこでは、「自分の得にもならないようなことを、人知れず、する」ということをお話しました。
そのことについて、より詳しくお話します。

ある国の小学校では、「誰にも知られずに、自分の心だけが知っている、何か良いことをする日」というのがあります。
それは「こびとの日」といって、月に1回設けられているそうです。
こびとというのは、童話や昔話でよく登場してきますが、そこで、こびとは、人が気づかないところで、あるいは人が寝静まっている夜などに、なにがしか親切なことをしたりすることがよくあります。(たとえば、グリム童話「こびとと靴屋」など)

月に一度、そのこびとのようなことをしよう、こびとのようになろうという日が「こびとの日」なのです。
ですから、人に見られないように、また人に知られないように、子どもたちは、なにか良いことをするのです。
普段あまり人目につかないところをコソッと綺麗に掃除してあげたり、黙って履物を揃えてあげたり…。

しかし、それは誰からも感謝されることはありません。誰からも評価されることもありません。
なぜなら、誰も知らないからです。誰にも教えていないからです。
唯一知っているのは、自分の心だけです。
もちろん、誰も見ていないのですから、何か良いことを実際はしなくったって、しなかったことも誰も知らないので、咎める人はいません。

日本では、人間性を鍛えるとかで、トイレ掃除をしたり、なにか良いことをさせたりするというビジネス研修がよくありますが、それらはあくまで人間性養成のためだとか、その行為を評価されるため、などといったことが多いようです。
また、会社内で募金箱が回ってくるときに、一口300円以上などと下限が決まっていたりして、さらに、そこの営業所の所長などが、「私は所長だから、私は3千円入れとくよ」と、みんなにわざわざ宣言してお金を入れるという光景も、よくあります。
そういうふうに、人目を常に意識しないと、良いことができないというのは、やはりセルフ・エスティームがかなり低いと言わざるをえません。
大人は、他人に評価されないと、そういうこと(何か良いこと)ができないのでしょう。

また、自分が成長するためなどといった目標設定がないと、良いことができないのでしょう。これらは、人に決して知られないようにする「こびとの日」とは、まったく性質を異にするものです。
こびとの日は、何かのためといったことではなく、また人に感謝されるためでもなく、人知れず、人目につかないように、こびとになりきって、そっとなにか良いことをする日なのです。
こうしたことを、小さいときからおこなってきた子どもは、セルフ・エスティームが高く、また、他人の評価を気にしない自信のある大人になっていくでしょう。

このような「こびとの日」が、日本でも、幼稚園や小学校などで設けられると、日本全体が幸せな空気に包まれていくのではないかなあと思っています。
なにより、こびとである子どもたちの心のなかが、幸せな気持ちでいっぱいに満たされていくのではないでしょうか。