単純で退屈な練習を楽しくするには?
続けることは、意外としんどい
継続は力、とよく言いますね。
でもねぇ…。続けるということは、しんどいことなのです。それは誰でも同じでしょう。
好きだから続けることができる。
目標があるから続けることができる。
そういうことも言いますが、『続ける』ことの裏側には、『頑張る』ということがあるのです。
『頑張る』とは忍耐とか努力とか、そういう意味が含まれています。好きだから努力できる、目標があるから忍耐も可能。
たしかに、そうかもしれません。でもねぇ、好きで始めたことでも嫌になることもありますし…。
さて、ピアノをやめたいと言い出す場合、『練習するのが嫌だから』というのは、今も昔も最も多い理由だと思われます。
他の習い事との兼ね合いや勉強が大変になったという理由ももちろんありますが、「ピアノを練習する時間がとれなくなった」という言葉の裏側には、「練習しなくてもいい習い事なら続けられるんだけど…」という匂いがぷんぷんします。
確かに、スイミングやお習字などであれば、毎日家で練習しなくても上達に大きな影響を及ぼすことはないかもしれません。
しかしピアノは、やはりたとえわずかであっても、毎日練習したほうがいい。これがネックになるのですよね。
この春にピアノをやめた、小学生の男子生徒。とにかく練習が嫌い。彼は今、テニスに興味があるらしい。ずっと以前は野球で、その次はサッカーだった。テニスはご家族で楽しめるとかで、彼も楽しんでいる様子。
このような、娯楽である場合であれば、努力というほどのことをしなくても、それなりに楽しめます。
でも、もししばらく続けていて「もっと上手になりたいなぁ」と思ったとしたら、そこからはやはり『努力』というものをしなくてはならなくなります。
彼の場合、サッカー選手になりたいとレッスン中に言ったことがありましたが、「サッカー選手になりたいならね…」と私が筋トレやその他、スポーツ選手としてしなければならないことをほんの少し紹介すると、「え〜っ!うっそだぁ!そんなこと。めんどくせ〜」と言いました。
私はもしかしたら彼の夢を壊したのかもしれませんが(許しておくれ)…。彼はきっと、サッカーを始めたら明日からでも試合に出ることができる、と思っていたのでしょうね。
「サッカーなら、練習しなくていいと思ったのに」とも言っていましたからね。
この言葉に、いろいろなことが集約されていることを私は感じたのです。
少し話は飛びますが、ある程度の年齢になった大人であれば誰でも、いくつかの『三日坊主』体験があると思います。
たとえば、『語学学習』『楽器の習得』『資格取得のための勉強』というものから、『ダイエット』『禁煙』『健康のためのジョギング』などなど。
それが切羽詰っていなければいないほど、『三日坊主』はすぐ隣でささやきます。
「そんなに頑張らなくてもいいんじゃないの?」
物事の習得は、自分のイメージするレベルまで達するためにはある程度の時間と努力が必要であることは、誰でも理解しているのです。
しかし、その過程において『単純で退屈な』時間があるということに気づいている人は、実は少なかったりするのです。
そしてさらに、その『単純で退屈な』時間が、想像以上に長く続いたり、予想をはるかに超えた退屈さだったりということに、今さらながら気づいたりすることもまた、少なくないのです。
英会話を習得するためには、『英単語』を覚えなければなりません。単語を知らないのに会話はできませんからね。
野球をしたいなら、『素振り』をしなければなりません。
いきなりバッターボックスに立ったところで、毎回バットがボールにジャストミートするなど、まずありませんしね。
素振りをするときも、きちんと『考えながら』することも大切です。何も考えずにバットをぶん回していても、ほとんど何の意味もありません。
特にスポーツの場合は『イメージトレーニング』が大切だと言われていますし、バットを振るときにリズムやタイミングを意識するのとしないのとでは、同じように続けていたとしても結果が違ってきます。
ピアノの練習も、はっきり言って『単純で退屈なこと』の繰り返しです。
音符を読む、地味ですよねぇ。
できないフレーズを何度も練習する、これも楽しいものではありませんよねぇ。
レッスンに行くと先生にダメ出しされる、あれだけ頑張ったのに、と思いますねぇ。
でもピアノだけではなく、物事の上達の過程には必ずといっていいほど、『単純で退屈な』時間はあるのです。その量や質は別問題として。
では、その『単純で退屈な』時間を楽しくする方法はないのでしょうか。
楽しさは人それぞれですから、その方法は一つではありませんが、少し役立つかもしれないということをご紹介します。
『やるべきことを絞り込む』ことです。たくさんの課題があっても、必ず一つずつに絞り込み、一つ一つをクリアしていくようにします。
そしてさらに、そのハードルをやや低めに設定することです。低めに、というのは、たとえばこういうことです。
『3日あれば習得できると思われる項目』を考え、まずそれをクリアするようにするのです。
『1小節を、絶対にミスタッチなしに弾く』とか、『1フレーズだけ、絶対に手を見ないで弾く』とか。右手だけ限定、というのでも構いません。
質的に低い目標にするのではなく、量的に低い目標にするのです。
そして、『やればできる』ことを脳に覚えこませるのです。これ、意外に効果的です。
とっても小さなことだ、と思うようなことでもいいのです。
「こんなことを目標にするなんて」ということでもいいのです。
『続ける』ことが目的なのですから、その目的に向かうための目標は、最初は小さくてもなんでもいいのです。
小さな目標の達成を『積み重ねる』ことが大切だからです。
たくさんの『小さな目標』の『積み重ね』は、いつかきっとあなたを、あなたがイメージする『その世界』に近付けてくれます。
『単純で退屈なこと』を『続ける』のは本当にしんどいことです。
『千里の道も一歩から』というと気が遠くなるかもしれませんが、単純で退屈なことだから短時間でクリアできる目標を作り、続け、積み重ねていきましょう。
気づかないうちに、あなたの後ろには道ができていますよ。
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