親力集中講義

第3回 子供のコップの水は少しずつたまる

今年の花粉の飛散量は過去最高だそうで、 花粉症デビューした人が大勢いるようです。 私はというと以前から花粉症があったのですが、今年は特に大きな変化がありました。

今までは、スギの花粉にしか反応しなかったのですが、 どうやらヒノキの花粉にも反応し出したようです。 聞いたところによると、まだ花粉症の症状が出ていない人も、 いつでも発症する可能性があるのだそうです。

それは、少しずつコップに水がたまっていくのと同じとのことです。 水は、コップいっぱいになるまで溢れ出ることはありません。 でも、溢れ出ていないときでも、水はどんどんたまっていっているのです。

そして、ある日突然、水が溢れ出るようになります。そのとき初めて、人はそれに気が付きます。 花粉症も同じだそうです。目に見えない形でたまり続けてきたものが、 ある日突然出てくるのです。

私は、この話を聞いて、子供の成長と似ているなと思いました。

私が教えた子で、なかなか九九を覚えられない2年生の子がいました。 毎日一生懸命練習しましたが、最初の2の段がなかなかマスターできませんでした。 他の子はどんどん覚えて、2の段、5の段、4の段と進んでいきました。 でも、その子はいつまで経っても2の段がすらすら言えませんでした。

それでも、がんばって練習を続けている内に、ついに2の段に合格することができました。 そして、その後、奇跡のようなことが起きました。2の段が合格した次の日に、 5の段と4の段も一発で合格してしまったのです。 私も親も、この子はもう九九が覚えられないのではないかと思い始めていたので、本当にびっくりしました。

この子のコップには、目に見えない形で水がたまっていたのです。 実は、このようなことは、子供の成長過程におけるいろいろな場面で見ることができます。 努力してもなかなか成果が表れなかった子が急にブレイクするということは、実際にあります。 それを見るのは、教師としての最高の喜びの1つです。

去年も、私はそれを見ました。ローマ字が好きで、毎日自主勉をやってくる子がいました。 でも、その割には、なかなか覚えられなかったのです。 ところが、3学期が終わる頃にやったテストでは満点でした。そのとき、満点は3人しかいませんでした。

勉強だけでなく、運動でもこういうことはあります。 逆上がりができなくて一生懸命練習していた子が、ある日突然できるようになります。 そして、そのときは、逆上がりだけでなく、前回りも後ろ回りもできるようになっています。 逆上がりの練習で、いろいろな筋肉が鍛えられるので、他の技もできるようになるのです。

子供のコップは、いつも少しずつ水をためているのです。でも、それは目に見えないものです。 大人は成果を急ぐあまり、イライラしたり感情的になったりしがちですが、 それは子供にとってとても辛いことです。成果を求めすぎず、 親がやるべき子供への働きかけを淡々と続けることこそが、大人に求められる態度です。

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