第48回人生はオセロと同じ。要所を押さえておけばやがて逆転できる
毎年、年に数回ですが、ボランティアで子どもたちにオセロを教える機会があります。
知人のSさんがメインで教え、私はそのお手伝いです。
オセロのよい点は、何と言ってもルールが簡単で始めやすいことですね。
それでいて奥が深いのも魅力で、「覚えるのに1分、極めるのに一生」と言われています。
子どもたちにじっくり考える体験をさせるにはもってこいです。
家族でやっているという子もときどきいますが、そういう子は断然強くてどんどん勝ちます。
やはり少しでも心得があると違いますね。
オセロの強い・弱いは、ちょっと見ていればすぐわかります。
初心者で弱い人は最初にたくさんの石を取ります。
一手で相手の石を10こくらいひっくり返して、自分の石がどんどん増えるのでにこにこしています。
強い人は、はじめ自分の石を増やすことに意識を向けません。
それは2の次であり、まず要所を押さえることに専念します。
例えば、四隅を取るのは常識です。
それ以外にもいろいろあって、後で自分が打てる場所を増やすために外側でなく内側の石を取る「中割り」という戦術も効果的です。
オセロでは、要所を押さえておけば後でいくらでも逆転できます。
要所を押さえることなく、2の次のことにかまけていると後であっという間に逆転されてしまいます。
それで、私は「これは人生や子育て・教育に通じるところがあるな」と思いました。
人生や子育て・教育でも、大切なのは要所を押さえることです。
例えば、子ども自身が、「自分はやれる」「私ってけっこういいかも」「ぼくってなかなかやるじゃん」と思えるようにしてあげることは一番大切なことです。
つまり、自己肯定感です。
同時に、「自分は親に大切にされている。親に愛されている」「親は信頼できる」「人は信頼できる」と思えるようにしてあげることも本当に大切です。
つまり、親をはじめとする他者一般に対する信頼感、要するに他者信頼感です。
この2つが人間の土台であり一番の要所です。
自己肯定感がある子は尻上がりに能力を高めていけます。
今はそれほどでなくても、必ず大きな花を咲かせるようになります。
他者信頼感がある子はよい人間関係を育てていくことができます。
今は挨拶ができなかったり社交的でなかったりしても、心配ありません。
少しずつ人間関係のスキルも学び、ゆくゆくはよい人間関係をつくれるようになります。
この2つに比べれば、勉強やしつけなどは2の次です。
ところが、2の次のものを優先するあまり一番の要所を台なしにしている親たちが少なからずいます。
テストの点や成績を上げるという目先のことにかまけて、子どもを叱っている親。
「○○中学に入れなければ」という視野狭窄的な思い込みで、子どもに無理難題を押しつけている理不尽な親。
挨拶ができないからと言って、子どもを叱りつける親。
片づけができない、だらしがない、やるべきことができない、言われたことができない、などと小言を言い続ける親。
子どもたちは、「また○○してない。○○しなきゃだめでしょ。何度言ったらできるの」と否定的に叱られ続け、その揚げ句に自己否定感にとらわれます。
同時に、親への愛情不足感と不信感、さらには他者一般に対する不信感を持つようになります。
自己肯定感と他者信頼感が台なしになってしまうと、長い人生でだんだん失速していきます。
親が世話を焼いている間はよいかも知れませんが、その後が問題です。
一体いつまで親が世話を焼いていられるでしょうか?
やがてはその子自身の力で人生を展開していくことになるのです。
そのとき本当に大切なのは何なのか、よく考えて要所を押さえるようにして欲しいと思います。
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