親野智可等さんによる「親力」アップのための集中講義
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第5回 がんばったときのことをいつも思い出せるようにしておくと、自分に対するいいイメージができる
私が受け持ったA君は、ノートや予定帳に書く字が乱雑でした。 ほとんど判読できないような字で、本人にも読めないのではないかと思われるくらいでした。 そこで、なんとか丁寧に書かせようと、いろいろ試みました。
「A君は今日発表をがんばったから、字も丁寧に書けそうだね」などと、書く前に励ましてみました。 「今日は絶対、丁寧に書きなさい」と強く指示してみました。 「丁寧に書きなさい。読めない字は書き直しですよ」と脅してみました。 書き途中の字を見て、「この『国語』という字は上手だね」などと、無理矢理、褒めてみました。 でも、なかなか改善が見られませんでした。
それに、少しショックだったのは、A君の前の年のノートや予定帳の字を見ると、 今よりもよほど丁寧に書いているではありませんか。となると、私の責任が重大ということは明らかです。 私が受け持つようになってから、字が乱雑になっているのですから。私はだんだん焦ってきました。
ちょうどその頃、Bさんという女の子が病気で1週間くらい休んでいました。 それで、私は子供たちに言いました。
私:
「Bさんは、病気でもう1週間もお休みしてしまいましたね。毎日、家で過ごさなければならないので、 とても寂しいそうです。みなさんは、毎日学校で友達と勉強したり遊んだりできますが、Bさんはできませんね」
子どもたち:
「Bさん、かわいそう」
私:
「みなさんに、何かできることはありませんか?」
子どもたち:
「Bさんにお手紙を書いたらいいと思います」
ということで、手紙を書くことになりました。
「じゃあ、みんなで、Bさんに心を込めてお手紙を書きましょう」 子供たちはいっせいに書き始めました。私はA君が気になって見に行きました。 すると、驚いたことに、A君は今まで見たこともないような丁寧な字で書いているではありませんか。 姿勢を良くして、一生懸命書いています。
私はとても嬉しくなりました。なんといっても、A君の気持ちが嬉しいではありませんか。 家で寂しく過ごしているBさんのために、心を込めて一生懸命書いているA君に感動して、心がジーンとしました。 そして、心からA君を褒めました。A君もとても嬉しそうでした。
A君は、休み時間にもがんばりました。手紙についているイラストにきれいに色も塗って、手紙を完成させました。 それを見て、私はいいことを思いつきました。この手紙をコピーしておけばいいのではないかと。 うん、これは、いいぞ。これは「使える」かも!
そして、コピーを取ってA君に見せました。 「A君は、Bさんのために心を込めて丁寧にお手紙を書きましたね。先生はすごく嬉しいので、記念にコピーしておきましたよ」。
A君もにこにこ聞いていました。そして、それを教室に貼りました。すると、A君は、 ときどきそれを見てにこにこしていました。そのときから、予定などを書くときに、 子供たちにこう言うようにしました。
「A君のお手紙のように丁寧に書こうね」。
これは効果抜群で、A君はもちろん、他の子供たちも一生懸命、丁寧に書くようになりました。
このように、手紙のコピーを貼っておくことで、 A君は自分ががんばったときのことをいつでも思い出すことができます。 すると、だんだん、自分はこんなに丁寧に上手に字が書けるのだと思うようになっていきます。 これは、つまり、自分へのいいイメージを作っていくことなのです。これは、とても大切なことです。
家庭でも、いろいろな面で、このようなことに心掛けるといいと思います。例えば、 次のようなことができると思います。
・お手伝いをがんばっている写真を貼っておく
・スポーツ大会で優勝した賞状を目立つところに掛けておく
・上手に書けた習字を貼っておく
・親子や兄弟で仲良く写っている写真を貼っておく
最後のものはがんばったことではありませんが、 自分たち親子兄弟は仲がいいのだというイメージを作ることができるので、お勧めです。
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