親力集中講義

第6回 授業参観から見えるもの

授業参観の日、子供たちはどの子も朝から興奮しています。特に、低学年の子はそうです。 いつも落ち着いて勉強している子でも、そわそわしてしまいます。 中には、普段と全く違う行動をしてしまう子もいます。ときには、思いがけない子が思いがけないことをします。 予想できない部分があります。授業参観日とはそういう日なのです。

1年生を受け持ったとき、一番最初の参観日に、ある子がお母さんを見るなり、 突然興奮してはしゃいでしまったことがありました。いつもはとてもしっかりやっている子なのですが。 それを見て、お母さんはとてもショックを受けた様子でした。いつもこうなのかと思ったのでしょう。

そこで、私は言いました。 「いつもはしっかりやっていますよ。今日は特別ですよ。お母さんが来てくれて嬉しいんですよ」。

私は、こう言って、その子を一生懸命に弁護しました。このままでは、 その子が家で叱られることは間違いないと思ったからです。 いつもはとてもしっかりやっている子なのですから、かわいそうです。

私は、とても心配だったので、次の日の朝その子に聞いてみました。 そうしたら、特に叱られはしなかったそうです。 そして、その子が手渡してくれたお母さんからの連絡帳には、次のように書いてありました。

「帰ったらどうやって叱ろうかと思っていましたが、先生のおかげできつく叱らずに済みました。 少したって冷静になったら、あんなに喜んでくれたのがかわいく思えてきました。 子供にはこう言いました。お母さんを見て喜んでくれたんだって?ありがとう。 でも、あなたがはしゃいだので、お母さんは、冷や汗をかいて、気を失いそうになったよ」

こういうお母さんなら、子供は立派に育ちます。中には、この女の子と全く反対の表れをする子もいます。 いつもは、勉強に集中しないで出歩いたり友達にちょっかいを出してばかりなのに、 参観日になると突然しっかりする子です。こういう子は、それほど多くはありませんが、ときどきいます。

実は、こういう子こそ要注意なのです。というのも、彼らは親を怖がっていることが多いからです。 彼らの多くは、家でとても緊張して過ごしています。父親か母親が、 またはその両方がとても口うるさかったり、とても厳格だったりするからです。 家で、四六時中注意されたり、叱られたり、マイナスイメージの言葉を投げかけられたりしているからです。

本来、家というものは、くつろいで安らかな気持ちで過ごせるはずの場所です。 子供にとっては、子宮の延長のような安らぎと癒しの場であるはずです。ところが、今、 そうなっていない家庭がけっこうあるのです。

その子たちは、親の愛情を実感できず、気持ちが満たされていません。そのため、 学校でその反動が出てしまいます。学校で、不満が爆発したり、 友達とささいなことでけんかになったりしてしまいます。

でも、親が学校に来る参観日だけは、とてもいい子になります。中には、豹変する子もいます。 親はそれを見て安心します。ですから、担任が普段の様子を話しても、なかなか納得しません。 家ではとてもいい子で、学校で見てもとてもいい子だからです。 もし何か問題があるとしたら、それは学校や担任の責任だというように考えます。 こういう親を納得させるのは、なかなか骨が折れる仕事です。

みなさんのお子さんはどうですか?ぜひ、参観日にお子さんの様子をよく見てください。 親の姿を見て、舞い上がって喜んでしまうくらいの方が、子供としては健康なのです。

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