親力集中講義

第11回 お笑い系の子ども

冬休みに入る2日前の日に、私のクラスではお楽しみ会をやりました。いろいろとがんばった2学期の打ち上げという感じで、みんなで大いに楽しみました。やったものは、お笑い、座布団取りゲーム、ジャンケン列車などです。

このお笑いがなかなか面白かったです。「あるある探検隊」をやった男の子の3人組、漫才らしきものをやった女の子の2人組、長い髪の毛を全部前に垂らしてお化けのまねをした女の子の2人組など、けっこうウケけていました。

そういえば、以前受け持った子の中にも、面白い子がたくさんいました。ある女の子は、芸能人の物まねがすごく上手でした。その子は、テレビを見ながらいつも練習していたようです。休み時間の教室やプレイルームがその成果の発表の場でした。

また、いつも面白いことを言ってみんなを笑わせてくれる男の子もいました。その子が得意なのはいわゆるトークで、とにかく話が面白いのです。給食のときなど、同じ班になった子供たちは給食が食べられなくなるほどでした。隣の女の子が、牛乳を飲んでいるときに面白いことを言われて、こらえきれずに吹き出してしまうということも何度かありました。

鼻から牛乳を垂らしながら、その女の子が「先生、○○君が笑わせてくる」と、ときどき訴えに来ました。怒っているのか笑っているのか分からないその顔を見ながら、私もついつい笑ってしまうのでした。

私が子供の頃にも、このような面白い子は何人かいました。中には、そこにいるだけで面白くてみんなを楽しい気持ちにしてくれるという子もいました。でも、私はその反対で全く面白くも何ともない子でした。私は、自分にこのようなみんなを楽しませる能力がないのを残念に思っていました。

一番強くそれを感じたのは、中学1年生のときです。そのとき、私ともう1人の男子H君と女子2人が同じ班でした。そのH君がとても面白い子で、いつも私たち3人を笑わせてくれていました。でも、そのうちに、私はだんだん寂しくなってきました。H君の言うことややることはウケるのに、私が言うことややることは全然ウケないからです。

折しも思春期の真っただ中で、異性に目覚める時期です。当然、私も、女子の気を引いてみたいという気持ちがありました。それで、いろいろとやってみるのですが、これが全然ウケないのでした。H君が大ウケするのを横目で見ながら、私は、ますます寂しくなっていくのでした。

後年、成人してからも、ユーモアの本やらジョークの本などいろいろ読んだり試したりしてきました。でも、なかなか思うようにはいきません。本当に、みんなを笑わせたり楽しませたりする能力というのは、得がたい能力です。一種の才能です。持って生まれた宝です。

というわけで、私は、クラスの中に面白い子を見つけると、今でもうらやましくなるのです。そして、その子の親には、面談のときなどに「○○君は、いつも面白くて、みんなを楽しませてくれてますよ」と教えてやります。でも、これを聞いて喜ぶ親は意外と少ないというのが実感です。「そんなことより引き算の筆算ができるようになってほしい」という話になっていくのが落ちです。

私は、自分の経験から思います。みんなを笑わせたり楽しませたりする能力は、得がたい能力であり、その子の財産になるものです。もし、そういう子がいたら、その能力を高く評価してやってほしいと思います。それは、その子が生きていく上で大きな力になるはずです。

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