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第12回 好き嫌いをなくしてやるにも、余裕が必要
先日、ある雑誌の記者さんから、取材を受けました。その記者さんが次のように言ってらっしゃいました。
食品会社の調査によると、最近は子どもの嫌いなものを食べさせる工夫をしている親が減ってきているそうです。
実は、私もまったく同じことを感じていました。というより、子どもの好き嫌いをなくしてやろうという意識すらない親が増えてきたように感じられます。では、なぜそのようになってきたのでしょうか?
1つには、今は食品の種類も量も多いので、嫌いな物をあえて食べなくても困らないということがあると思います。以前は、出されたものは少しくらい嫌いでも食べておかないと、後でお腹が空いてしまうということがありました。でも、今は、ほかに食べる物がいくらでもあります。
2つ目としては、今の親自体が偏った食生活をしてしまっている人がいるということもあると思います。それは、今の親の世代がすでにある程度上記のような環境で育ってきているからだと思います。
3つ目としては、学校で以前のように「すべて食べるまで許さない」という指導をしなくなったということもあると思います。かつてあった、「すべて食べるまで許さない」というような指導は、子どもの人権や個人差を無視したものであり、それこそ許されないものです。これによって、食べ物についての深刻なトラウマを持たされた例は数多く報告されています。このようなことを反省した結果、学校での指導が改善されてきました。でも、今度はそれが行き過ぎてしまっているということがあると思います。つまり、「羮(あつもの)に懲(こ)りて膾(なます)を吹く」状態です。それで、学校で子どもが困らないので、家で好き嫌いをなくす努力をする必要もなくなったというわけです。
このような理由から、なんとか子どもの好き嫌いをなくしてやろうという意識は、かなり薄くなってきているようです。
また、中には、意識はあってもなかなかできないという親たちもいるようです。好き嫌いをなくしてやろうという気持ちはあるのに、そのための努力をする余裕がないという親たちです。つまり、料理方法を工夫して、少しずつ嫌いな物を食べられるようにしてやりたいと思っていても、そうする余裕がないのです。
金銭的にも、時間的にも、気持ち的にも、そういう余裕がないのです。つまり、生活全般に渡って余裕がないのです。ですから、食事についても、時間に追われる忙しい生活の中で、取りあえず1回1回の食事を済ましていくのがやっとという状態です。子どもの好き嫌いをなくしてやるための料理の工夫まで、なかなか手が回らないのです。
このような家庭の親たちは、親子の触れ合いやしつけや勉強などにおいても、同じように余裕がない状態です。私は、社会の中の多くの家庭が、今、このような余裕のない状態に追い込まれつつあるように思います。私は、このことを深く憂えます。
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