第17回 子どもが必要としている言葉を贈るには、どうすればいいか?
サッカー・ワールドカップドイツ大会の、予選リーグが終わりました。 日本代表チームは最後の試合でブラジルに負け、予選敗退が決まりました。 ピッチ上の選手も監督も見ていた人たちも共々、がっかりとなったわけです。
ところで、その日の朝日新聞夕刊に、その最後の試合の様子を伝える記事が出ていました。 そこに出ていた1枚の写真に私は心打たれました。 それは、ブラジル戦で負けて予選リーグ敗退が決まった直後の、サポーターたちの写真です。
埼玉スタジアムと書いてありましたので、パブリックビューイングで観戦していた人たちだと思います。 2人の若い女性が泣きべそをかきながら横断幕を掲げていました。 その横断幕には、「また4年後」「ジーコお疲れ」と書かれていました。
その人たちも、試合を見ている最中は「あ〜あっ!」とか「何してるの!」などと言っていたかも知れません。 でも、試合が終わって負けたと分かったときから、全く別の言葉を監督や選手たちに贈っているのです。 「ジーコお疲れ」と労をねぎらい、「また4年後」と励ましているのです。
わざわざスタジアムまで出かけて行くくらい熱心な人たちですから、悔しい気持ちも大きかったはずです。 でも、そこで気持ちを切り替えてそのような横断幕を出せたということは、立派なことです。 これも1つのフェアープレイです。
日本代表の選手たちが成田空港に帰ってきときも、テレビのニュースでいい場面を見ました。 選手たちを迎える人たちが持っていた横断幕に、「ごくろうさま」や「ありがとう」という言葉が大きく書いてありました。 またまた、私はうれしくなりました。 「ごくろうさま」で労をねぎらい、「ありがとう」で楽しませてくれたことに感謝しているのです。
空港に帰ってきたとき、「あ〜あっ!」とか「何してたんだ!」などと言われたら、選手たちもたまったものではありません。 かなり大きな精神的ショックになるはずです。 サッカー選手などやめたくなってしまうかもしれません。
これはサポーターと選手の話ですが、親と子においても同じことが言えると思います。
先ほどのサポーターの言葉が試合中と試合後で変わっているように、親の言葉もそのときどきで変える必要があるのです。 そのためには、親が気持ちを切り替えることが大切です。
自分の気持ちを切り替えて、子どもがその時々に必要としている言葉を贈ってやらなければなりません。 親が気持ちを切り替えられないと、自分の感情を子どもにぶつけるだけになってしまいます。
たとえば、子どもの受験のときなどもそうです。 受験勉強中なら励ます言葉が必要です。 でも、受験直前には「もっとがんばれ」というより、「だいじょうぶ。受かるよ」と言ってやる方がいいのです。
たとえ、親として不安を感じていたとしても、「だいじょうぶ。受かるよ」と言ってやらなければなりません。 そして、受験に失敗したなら癒す言葉や再起を促す言葉が必要ですし、合格したならともに喜ぶ言葉が必要です。
ほかにも、スポーツの試合、ピアノの発表会、習い事の昇級がかかった試験、何かのオーディションなどで、同じことが言えそうです。 または、運動会、陸上大会、音楽会、縄跳び大会、中間や期末試験、月末テスト、単元末テスト、漢字テスト、計算テストなどでも同じことが言えそうです。
どの場合でも、そのときどきで、子どもが必要としている言葉を贈ってやりたいものです。 それには、親が自分の気持ちや感情に飲み込まれないことです。 そのためには、常日頃から自分の気持ちや感情を客観的に見るようにしているといいのです。
たとえて言えば、自分をもう1人の自分が見ているような感じです。 これは、いろいろな面でとても有益ですから、ぜひ、やってみてください。
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