親力集中講義

第31回 あなたは、立場を笠に着て権力を利用していませんか?その1

私がまだ20代前半だった頃、母方の祖父と社会保険事務所に行ったことがあります。

それは、祖父の年金の手続きをするためでした。
詳しいことは忘れましたが、たぶん、継続受給か何かの申請手続きだったと思います。

ところが、そこの職員がひどく横柄な態度で、私は非常に憤りを感じました。
ものの言い方も尊大で、「しょうがないから、よぼよぼなじいさんの相手をしてやる」という感じがありありと出ていました。
「はい、ここに名前書いてっ!」「判子は、ここっ!」という感じでした。

でも、祖父は特に気にすることもなく、おとなしく言われたとおりに書類に名前を書いて判子を押していました。
私は、ムッとした顔でその職員をにらみつけてやりました。
心の中でこう言っていました。

「このおじいちゃんはな、長い間、家族や社会のために一生懸命働いてきたんだぞ」
「家族や親類のみんなに優しくて、そればかりか、他人でも困っている人がいるとどんどん助けちゃう人なんだぞ」
「そうやって、ずっと、がんばってきたんだ。今年金をもらってるのは、このおじいちゃんの当然の権利だぞ。あんたにもらうんじゃないぞ。それなのに、なんだ、いったいあんたの態度は!!」

みなさんは、こういう態度の人をどう思いますか?

それから約30年が経ったわけですが、つい先日知り合いの人から社会保険事務所に行ったときのことを聞きました。
折からの年金問題もあって、社会保険事務所の職員はみんな平身低頭という感じだったそうです。

ところが、今度はそれをいいことに、来客者の方に非常に横柄な人がいるようです。
知り合いの人が見た光景によりますと、ある人が順番を待っているときに待ちくたびれて暴言を吐いたそうです。
「いつまで待たせるんだ!やる気があるのかよ?マスコミ連れてこないとやる気が出ないのか?」

それで、また職員が平身低頭して一生懸命に謝ってなだめていたそうです。
みなさんは、こういう態度の人をどう思いますか?

ところで、先日テレビを見ていたら、大手レストランチェーンの社長が会議で支店長たちに発破を掛けていました。
「いいか!お客様は神様なんだよ。神様の言うことは絶対なんだよ。もしできた物を持って行って、『これ注文してないよ』と言われたら、それは注文してないんだよ。たとえお客様の勘違いであっても、こっちのミスなんだよ」

レストラン側からすれば、こういう発想もあり得るとは思います。
1人でも多くの人に食べに来てもらう方がいいわけですし、それで生計を立てているのですから。
でも、それをいいことに、それを当然と思ってしまう客がいるので困るのです。

私も横柄な客を見たことがあります。
あるファミリーレストランで、レジの人がおつりを間違えて客に100円多く渡してしまいました。
すぐに気が付いて、「申し訳ございません。100円多すぎました」と客に言いました。

すると、その客は「フンッ」と言って100円玉を放り投げました。
とっさのことなので、レジの人は受け取れなくて、100円玉は床に落ちました。
そして、その客はそのまま出て行ってしまいました。
レジの人はお金を拾うときどんな気持ちだったかと思います。

ここまでひどくなくても、客の立場でいるとき普段より言葉遣いが尊大になるという人はけっこういます。
「コーヒーじゃなくて紅茶って言っただろ」
「おい、こんなの頼んでないだろ」

私は、個人的には、間違ってコーヒーが出てきたとしても、せっかくだからとありがたくいただいてしまうくらいの人の方が好きです。
もし、一緒にいる誰かが「あれ、あなたが注文したのは紅茶じゃなかった?」と親切に言ってくれても、「ちょうど『コーヒーにすればよかった』って思ってたとこなんだよ」などと言ってありがたくいただいてしまう人の方が好きです。

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