親力集中講義

第34回 子どものとき虫と遊ばないで、いつ遊ぶのか?

子どもたちは、ただいま夏休みの真っ最中のことと思います。 いつもより時間にゆとりのあるこのとき、ぜひ子どもたちにやってもらいたいものがあります。それは昆虫体験です。

私の家の近くにあるホームセンターでもカブトムシとクワガタムシがたくさん売られていましたが、夏休み直前の土日にすべて売り切れてしまいました。 もちろん、買った虫で遊んだり飼ったりするのもいい体験ですから、それもどんどんやってほしいと思います。 でも、本当は、虫を探したり捕まえたりすることも、ぜひやってもらいたいと思います。

というのも、それこそ自然体験そのものだからです。
しかも、このほうがいろいろな虫たちに出会えます。
カブトムシやクワガタムシはおもしろい虫ですが、それしか知らないというのはさみしい話です。

一番いいのは、親子で里山や森林公園などに行ってみることです。
捕虫網や虫かごなどの他にも、虫眼鏡や昆虫図鑑も持って行くといいでしょう。
森林公園なら涼しいしマイナスイオンもいっぱいなので、夏の野外活動に慣れていない子どもでも可能です。
経験のない子には、親が虫の探し方を手ほどきしてやるといいでしょう。
自分で自信のない人は、本やネットで予習していけばだいじょうぶです。
子どもよりほんの少し多く知っていれば、それを教えてやることができます。
もしかしたら、子どもから尊敬のまなざしが向けられるかも知れません。
あまり知ったかぶりして、あとでバレても困りますが。
経験豊かなお父さんだったら、その点だいじょうぶでしょう。

虫の食べた跡のある木の葉を探したり、葉を裏返してみたり、倒木や朽ち木の下を掘ってみたりすること自体がとてもいい自然体験です。
自然の中で、見たこともないおもしろい虫を見つけたときの喜びは、格別です。
大人も子どもも興奮間違いなしです。
じっくり観察していると、自然の不思議さを感じずにはいられません。
「こんな生き物がいるのか!」「なんておもしろいんだ!」「へんてこな形だなあ!」「うまくできてるなあ!」「へんな動きだなあ!」「なんてきれいなんだ!」「不思議だな〜!」

もちろん、じっと見ているだけでもいいのです。
でも、持ち帰って飼えるだけ飼ってみるのもいい体験です。
虫かごに入れるときは、その虫がいたところの土や葉も一緒に入れるといいことも教えてやりましょう。
それがその虫の餌であり住みよい環境でもあるからです。
こういう体験は、店で買った虫を飼うだけでは得られないものです。
持ち帰った虫が死んでしまっても、「しっかり面倒みないからよ」とか「だから言ったでしょ」などと余分なことを言わないでください。
一緒にお墓をつくって、お弔いをしてやればいいのです。

ところで、その気さえあれば、自宅でもいろいろな虫を捕まえたり観察したりすることはできます。
たとえば、夜、庭に白い布を張って、強力な懐中電灯や車のライトなどで照らすのです。

これは、いろいろな虫を集めるのに適しています。
これを里山の雑木林の近くでやれば、カブトムシやクワガタムシなどが来る可能性もあります。

また、虫の好きな物をお皿に入れて庭やベランダに置くのも手軽でいい方法です。
たとえば、ブドウ、バナナ、蜂蜜、黒蜜、ヨーグルトなどです。
カブトムシには、ワインに漬けたバナナがいいそうです。

近ごろは、ムシキングというカードゲームがきっかけで、甲虫に興味を持つ子が増えたといわれています。
大事なのは、それをどうやっていい方に広げていくかです。
ぜひ、実際の本物体験に結びつけて欲しいと思います。
そして、それが甲虫だけでなくほかの虫にも広がるといいと思います。

多くの場合、昆虫体験は子どもにとって最も身近でおもしろい自然体験です。
子どもは昆虫体験を通して自然を体験をするといってもいいくらいです。
というのも、虫ほど子どもを楽しませてくれる「自然」はほかにないからです。
実にいろいろな形をした小さな生き物が、それぞれのおもしろい動きや興味深い生態を見せてくれます。
あるものはコミカルで、あるものはたくましく、あるものは美しく、そしてあるものははかなく、それぞれがたった1つの命を抱いて一生懸命生きています。
虫は、子どもたちの目を自然の神秘や命の不思議に向けさせてくれる地球からのメッセンジャーなのです。
昆虫体験の中で、子どもはそのメッセージを自分の中にしみ込ませていくのです。

いろいろな夏休みの過ごし方があると思いますが、私は、「子どものとき虫と遊ばないで、いつ遊ぶの?」と言いたいと思います。
人間の成長には発達段階というものがあって、各段階でやるべき事があるのです。
子ども時代には、子どもがやるべきことをきちんとやらせることが大事です。
それが健全な発達というものです。
子どものときに虫と遊んだこともないような大人が増えて、だいじょうぶでしょうか?

近ごろは「エコ」とか「環境に優しい」などという言葉が流行っていますが、昆虫体験もない大人にその大切さが本当にわかるのでしょうか?

子ども時代にやるべきことをやらせないで、大人がやるようなことばかりをやらせていては、とても心配です。
その子自体も心配ですが、社会全体のレベルでも心配です。
自然の神秘や命の不思議に向き合ったことのない人、本物体験や一次情報がなくバーチャル体験や加工情報しかない人、与えられた勉強ばかりやってきて燃え尽き症候群になる人、与えられた問題や仕事だけ能率よくやれる人、自分が何をやりたいのかわからない人…。

あなたは、子どもにどんな夏休みを送って欲しいですか?
自分が子どもだったら、どんな夏休みを送りたいですか?

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