親力集中講義

第35回 今あるもののありがたさ、感じていますか?

今年の10月の最初のころ、私は元気いっぱいでした。
でも、そのあと風邪を引いて、なかなか治りませんでした。
ものすごく高い熱が出たというわけではないのですが、微熱とだるさがいつまでも続くという状態でした。

休みをしっかり取って、ひたすら寝ていられればもっと早く治ったはずです。
でも、なかなかそうはいきませんでした。
治りかけたころ講演や取材などのどうしても外せない用事で出かけて、そのときはいいのですが、帰ってくるとグッタリということが何回か繰り返されました。

こういう状態でしたから、予定していた仕事もはかどりませんでした。
せっかくメルマガを日刊に戻してがんばっていたのに、急にバッタリ止まってしまい、読者のみなさんにはご迷惑とご心配をおかけしてしまいました。

やはり、こういうことがあると、健康のありがたさを改めて思い知らされます。
いつもは当たり前にできていることも、すべて健康があってこそできるのだということがわかります。
今、こうやって原稿を書くことができるのも、健康があってこそです。

健康があるときは、それが当たり前になっていて、そのありがたさがわからないものなのですね。
そして、同じようなことが健康以外のことでも言えます。
どんなものでも、今あるもののありがたさは、なかなかわからないものなのです。
今あるものはあって当たり前であり、それよりもっと別のものや、さらにすばらしいものが欲しいという気持ちが人間には常にあるようです。
人間の欲には限りがないということです。

そして、欲に駆られれば駆られるほど、今あるもののありがたさがますます見えなくなるということもあります。
これらのメカニズムは、自分のことでも家族や子どものことでも当てはまります。

子どもの成績をもっと上げてやりたい、勉強できるようにしてやりたい、もっとテキパキできる子にしてやりたい、片づけができないのを直してやりたい、おとなしすぎるのをなんとかしてやりたい、こういう気持ちを持っている人は多いと思います。
これは親の願いでもありますが、欲でもあるのです。
願いと欲は同じです。
言い方が違うだけで、本質的には同じです。

欲が強すぎると、今あるもののありがたさが見えなくなってしまいます。
親の願いが強すぎると、ありのままの子どものいいところが見えなくなってしまうのです。
そして、もっともっとと求めてしまいます。
年端もいかない子どもに、きつい言葉をぶつけてしまうこともあります。

でも、それでは、子どもはたいへんです。
親の「願い」という欲が強すぎることで、日々苦しんでいる子どもたちがたくさんいます。
実際、子どもの苦しみの大半は親の欲が生み出したものなのです。

そこで私は、親のみなさんに一歩下がって子どもを見ることをおすすめしています。

つまり、親の欲で作り上げた勝手なイメージから一歩下がって、今子どもにあるものを見てみるのです。
そうすれば、それがいかにありがたいことかがわかってきます。

成績が上がらなくて困るといっても、読み書きはできるのです。
それは、当たり前のことではなく本当にありがたいことなのです。

読み書きもできなくて困るというときは、元気に生活してくれるだけでありがたいと思い直します。
おとなしすぎて困るというときは、人に乱暴するよりいいと思い直します。
マイペースすぎて困るというときは、一応自分でできるだけましだと思い直します。

子どもは同じままでも、親が一歩下がって見ればいいのです。
そうすれば、別のものが見えてきます。
もともと、親が自分の欲で勝手に前に進みすぎていただけなのです。
勝手に進みすぎた分を戻るだけでいいのです。

そうすれば、その子が今持っているよさが全て見えてきます。
それはずっとそこにあったのに、親に全く見えていなかっただけなのです。
実際、親だけには見えていないその子のよさというものがたくさんあるのです。
一歩下がって、それを見つけてあげてください。

それは、つまり、ありのままの子どもを受け入れ、それを認めてあげることです。
そうすれば、子どもは毎日を安らかな気持ちで過ごすことができます。
その安らぎの中で、子どもは「自分はここにいていいんだ」「周りは信頼していいんだ」という気持ちを持つことができるのです。
この、自分という存在に対する自信と周りへの信頼感こそが、人間にとって一番大切なものなのです。

一番大切なところをしっかりやっておけば、枝葉末節はついてきます。
一番大切なことに比べれば、勉強もしつけも枝葉末節です。
枝葉末節にこだわりすぎて、一番大切なことをおろそかにするのは本末転倒です。
根っこや幹がしっかりしていれば、枝も葉っぱもしっかりついてくるのです。

さあ、みなさん、一歩下がって見てみましょう。
今あるもののありがたさを見つけ出しましょう。

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