第36回 「今までの子育てに後悔がある」という人へ
先日、ある会場での講演が終わって、私が控え室に戻ったときのことです。
主催者の1人で、自分も2人の子どものお母さんだという方が、ハンカチで目頭を押さえながら話しかけてくれました。
「先生のお話を伺って、目から鱗が落ちました。
それで目が痛いので、涙が出ました。
言われてみると、本当にそうだと納得することばかりです。
なんで今まで自分で気がつかなかったのかと、不思議なくらいです。
今まで自分がやってきたことは何だったのかと、子どもにすまない気持ちでいっぱいです。
今日、先生のお話を聞けてよかったです。
明日から、子どもにも自分にももっともっと優しくできそうな気がします。
いいお話を、ありがとうございました。
でも、もっと早く聞きたかったです。
後悔することばかりです。
今からでも間に合うでしょうか?」
実は、私のメルマガや本や講演についての感想の中で、「もっと早く読みたかった。もっと早く聞きたかった」という感想が非常に多いのです。
「感情的に叱ることには大きな弊害がある」と聞けば、「ああ、しまった。さんざんやってきてしまった」と感じます。
「受容と共感でいい親子関係をつくることが大事」と聞けば、「今まで子どもの気持ちを無視してノーばかり言ってきたので、すでに親子関係がぎくしゃくしている」と感じます。
そして、過去の自分がしてきたことを振り返って深く悔やむことになります。
もちろん、これは大事なことです。
過去の自分がしてきたことを振り返って深く悔やむことで、それを繰り返さない決意ができるのですから。
でも、その結果として、無力感にとらわれるという状態は望ましくありません。
「もっと早く読みたかった。よし、これからこうしよう」となってくれればいいのですが、「もっと早く読みたかった。私はなんてことをしていたんだ。もう遅い」ということになってしまっては望ましくありません。
私は思うのですが、もっと早い段階で聞いていてもピンと来なかったということもあるのではないでしょうか?
今までのそういう自分があるからこそ、ピンと来るのではないでしょうか?
もっと早い段階で聞いて、それが物理的に目や耳に入っても、心には届かなかったかもしれません。
自分の子育ての中でいろいろな経験をし、「これはよくないのではないか」「あ〜、やっぱり感情的に怒るのはよくないのかも」とか「こうするといいようだ」「子どもに共感することって大事かも」などと薄々感じていたからこそ、私の書いたものを読んで(話を聞いて)得心できるということがあると思います。
そうでなかったら、「へえ、そんなものなのかな」で終わってしまうはずです。
子育て以外のことでもそうですが、自分の中で薄々感じていたことを他人から言われたとき、人は「まったくそうだ」と得心するのです。
でも、それに対応する経験が自分の中にまったくなくて、一切そういうことを感じていないときは、「へえ、そんなものなのかな」ということになるのです。
そして、すぐそのことは忘れてしまいます。
これは、何事においてもそうだと思います。
ですから、私の書いたものを読んで(話を聞いて)得るものがあったとしたら、それはみなさん自身がすでに内側に持っていたものなのです。 それは、親と子が共に生きる掛け替えのない時間の中で、貴重な人生の経験を通して得てきた理解であり、知恵であり、真理であり、大いなる宝とも言うべきものなのです。
もちろん、それは、はっきりしたものではなく、意識と無意識的の境にあったのです。
薄々感じているとはそういうことです。
それは薄い膜に包まれていました。
それを、他人である私が少しつつきました。
そうしたら、膜が破れてあなたの意識の上に目に見えるように広がってきました。
でも、それは、もともとあなたのものなのです。
長い時間をかけて得てきた、あなた自身の宝なのです。
(ですから、私が書いたものを読んで、非常にしばしば、みなさんは私が書いた以上のものを得たと感じることがあるはずです)
私は少しつついただけです。
それに、つつくのは、私でなくてもよかったのです。
私はただの郵便配達人です。
私が配らなくても誰かが配ったでしょう。
そして、あなたへ手紙を書いたのは、あなた自身です。
自分の経験こそが生きた知恵であり宝です。
経験だけが、真に人を学ばせてくれるのです。
得難い経験をさせてくれるわが子は、あなたを理解と知恵に導いてくれ、成長させてくれる神や仏の使いです。
今、新しい理解に至ったとしたら、それをわからせてくれたわが子と過去の自分に、「ありがとう」です。
過去の諸々は、あなたがこの理解に至るのにすべて必要だったのです。
そうです。
あなたが今のこの理解に至るために、過去のすべてが必要だったのです。
すべてが、です!
人は、みんな手探りで生きています。
人生は後悔の連続であり、その経験を通して少しずつ成長していくものです。
うまくやっているように見える人たちも、みんなあなたと同じように後悔の連続の中で手探りしているのです。
ただ、隣の芝生は青く見えるだけです。
ですから、いたずらに無力感にとらわれる必要はありません。
今、新しい理解に至ったことを喜んで、これからそちらの方向に進んでいけばいいのです。
始めるに遅すぎるということはないのですから。
同じことを繰り返さないように気をつけて、これからはひたすらいい方向に進んでください。
そのためには、次のことが大切です。
・過去の自分がしてきたことを振り返って、深く悔やむこと
・「もう二度と以前の自分に戻らない」という一大決心をすること
・忘れないための方法を工夫すること
・自分を客観的に見られるように努力する(たとえば、怒りに飲み込まれて我を忘れることのないように)
みなさんに、安らぎを!
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