親力集中講義

第38回 子どもがやりたいことを、どこまでやらせて、どこでとめるか?その判断の基準とは?

あるファストフード店に親子連れが入ってきました。
親が注文コーナーに並ぼうとしたとき、子どもが移動して物売り台のところに行きました。
その台の上には、キャラクター商品が置いてあったからです。
子どもは、初めは見ているだけでしたが、やがてさわり始めました。

これはとてもよく見られる光景ですが、このときの親の対応はまさに千差万別です。
そして、そこには、日ごろの子どもへの関わり方がとてもよく表れます。

子どもが台に向かって動き始めた瞬間に「ダメ、ダメ」ととめたり、台の上の商品を見始めただけでとめたりするひとも多いようです。
このような、「とにかく、なにもやらせない」「とにかく、すぐやめさせる」という過干渉的な対応が多いと、子どもの好奇心はしぼみます。

逆に、子どもが商品の袋を開けようとしていて、それによって商品が壊れたり袋が破れたりする可能性もあるのにとめないひともいます。
あるいは、まったく子どもから目を離してしまい、その行動を見ていないひともいます。

このような放任的な対応だと、ひとに迷惑をかけますし、子どもも判断の基準や行動の規範が学べなくなります。

これら2つの対応は、いずれも両極端であり、危ないものです。
前回のコラム「親は迷うのが仕事 〜“交渉の余地なしの親”と“交渉の余地ありの親”〜」でも書いたように、極端は要注意です。
「真理は中庸にあり」と心に留め置いてください。

親は、これら両極端の間の適切な対応が必要になります。
適切な対応は、その場の状況と子どもの実状を総合的に判断することで可能になります。

子どもの実状とは、その子の年齢、能力、性格、行動パターンなどです。

そして、判断の基準をひと言で言えば、「許される範囲内でやらせる」ということです。

言い換えると、「ひとに迷惑をかけない範囲内でやらせる」ということです。

まとめると、「その場の状況と子どもの実状を総合的に判断して、ひとに迷惑をかけない範囲内でやらせる」ということになります。

たとえば、子どもが袋を開けているといっても、次の場合は許される範囲内と考えることができます。
・商品自体が、袋を開けて中を見られることを前提にしている
・一度開けて出しても、もとのようにしまえる袋であり、商品も袋もまったくいたまない
・子どももそれができる年齢であり、上手に行う能力もあり、それをするだろう性格も備えている
(もちろんこういう商品は少なくて、袋を開けようとする段階で止めるべきものがほとんどですが)

反対に、たとえば、子どもが商品に触らないでただ見ているだけでも、次の場合はできるだけ早くそこから離れさせたほうがいいと考えられます。
・触っただけで壊れそうな商品である
・子どもは、触るだけで壊れそうだという判断ができない年齢であり、触りそうな性格でもある

また、たとえば、次のような場合も考えられます。
・商品自体が、袋を開けて中を見られることを前提にしていない
・手に持つだけならだいじょうぶだが、袋から出すとよごれそうだし、再び袋に入れるのも難しそうだ
・子どもは、商品を上手に持てるが、袋から出して再び元の通りに入れるのは難しそうだ

このような場合は、触ったり持ったりするまでは許されますが、子どもが袋から出そうとしたところでとめなくてはなりません。

いろいろな場合があり得ますが、私は、「とにかく、なにもやらせない」や「とにかく、すぐやめさせる」などではなく「許される範囲内でやらせる」という基準が一番いいと思います。
「許される範囲内でやらせる」という発想がないと、なんでもかんでもとめてしまうことになります。

そして、「許される範囲」を超えそうになったらすぐとめることも大切です。
そのために、親は近くで見守ることが必要です。
よく言われる「子どもの手を離しても目は離さない」とは、この状態のことです。

そして、そのときのとめ方も大切です。
つまり、とめるときの親の言い方です。
「ダメでしょ」「いい加減にしなさい」「いつまでやってるの」などと言うのはよくありません。

「見るだけにしようね」「売り物だから触らないでね」「壊れやすいから触らないほうがいいよ」「袋から出すと同じように戻せないよ」「袋を開けると袋がいたむよ」などの言い方にしましょう。

理由も言ってやれば、子どもも納得できますし、その後の判断基準や行動の規範を学ぶことにもなります。

でも、このとめ方も子どもの実状によって変わってきます。
かなり小さい子で、まだものの道理がわからない子、言っても意味がわからない子、理解する能力が育っていない子、これらの場合は、別のことに注意をそらせるだけでいいのです。
「あっ、あそこに○○がある」「ほら、これ見てごらん」などと言えば、やめさせることができます。

そういう子に、やたら「ダメ、ダメ」と言う親もいます。
「○○だから□□してはいけません」としつこく理由を言って、わからせようとする親もいます。
中には、子どもをたたく親もいます。

これらは、いずれも、「悪いことは悪いと教えるため」と思ってのことですが、それは意味のないことです。
親は判断基準を教えているつもりでも、子どもに理解する能力がないのですから、無理なのです。

これらは、いずれも意味がないどころか、かえって大きなマイナスがあります。
子どもは、なぜそういう仕打ちを受けたか理解できないので、ただ、自分が否定された、自分が攻撃された、自分が叩かれたという意識が残るだけです。
そういうことは、どんなに小さくてもわかるからです。
こういう意識が積み重なると、人間形成に深刻な影響を与えます。

ですから、そういう小さい子は別のことに注意をそらせるだけでいいのです。
親は、決して、やってはいけないことをやってはいけません。

最後に、もう一度、判断の基準を確認します。
「その場の状況と子どもの実状を総合的に判断して、ひとに迷惑をかけない範囲内でやらせる」
これを頭に入れておいてください。

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