親力集中講義

第39回 十万本の髪の毛が、手の指をきれいにしてくれる

あるとき、私の講演を聞いてくれた方が、こういう感想を送ってくれました。

先日の講演で、先生からプラス思考が大切だというお話を伺って、本当にそうだなと思いました。
私も、これから絶対プラス思考でやっていきたいと思います。

実は、私は自分でもイヤになるほどマイナス思考なんです。
高校生のころそれに気づいて、「変わりたい、変わりたい」とずっと思ってきました。

でも、変われませんでした。

だけど、先日、先生のお話を聞いていて、本当に変わりたいと思いました。
今度こそ、「子どものために変わりたい。子どものために自分を変えたい。子どものために自分を成長させたい」と心の底から思います。

また、あるときは、私の講演を主催してくれた団体のメンバーさんからも同じような話を聞きました。
その方は、私のメールマガジンの読者でもありました。

親野先生のメールマガジンをいつも楽しく読ませていただいております。
先生の本もほとんど読ませていただきました。

その度に、私は、自分の言葉づかいを反省しています。
なぜかというと、私は、恥ずかしい話ですが言葉づかいがメチャメチャひどいのです。

「そんなこともできないなんて、バカなんじゃないの」とか「またノロノロやってる。だから寝るのが遅くなるんだよ」とか、平気で言ってしまいます。

先生の本に書いてあった、「ちゃんと片づけしないとデパート連れて行かないよ」のように「○○しないと□□だよ」という罰則型の言い方もすごく多いです。

自分でも、若いころから気がついていたんですが、真剣に直したいという気持ちにならずに今まで来てしまいました。
もちろん、少しは思っていましたが。

でも、自分は、はっきり言うと、自分の親がこういう言い方だったのが身についてしまったと感じています。
私もこういう言い方をされて育ちましたから。
私は、子どものころからず〜っとこういう言い方だったんだと思います。

今まであまり考えたことがなかったのですが、先生の本を読んで自分を振り返ったら、いろいろと思い当たる節がありました。

振り返ってみると、いろんなひとに嫌な思いをさせてきたんじゃないかな、とも思います。
そういえば、会社でもけっこうそういう言い方をしていたように思います。
でも、これからは、こういう自分を変えたいです。
子どもに与える影響を考えたら、今度こそ本気にならないとまずいな〜という気持ちでいっぱいです。

この2人以外にも、何人かの方に同じような話を聞きました。
では、何が同じかというと、「子どものために変わりたい。成長したい」というところです。

「変わりたいと思っていたけど変われなかった。今度こそ、子どものために変わりたい。成長したい」
「自分だけでは変われなかった。そもそも変わろうと真剣に思うこともなかった。でも、子どもへの影響を考えたら、今度こそ本気になった」

こういう気持ちは本当に尊いものですね。
みなさんの中にも、同じ気持ちのひとがたくさんいらっしゃると思います。
そういうみなさんに、私は心からエールを送りたいと思います。

そして、私は、「子育ては自分育て」という言葉を改めて思い出します。

子育てという得がたい機会に恵まれ、かわいい子どものために一生懸命がんばるその過程で、親はとても大切なことに気がつきます。

子どもにとって、親の影響がいかに大きいかということ。
親自身が子どもの環境そのものであること。
子どもだけ変えようと思っても、それは不可能だということ。
親自身が成長することで、初めて、いい影響を子どもに及ぼすことができるということ。

これらの厳然たる事実に、賢い親なら必ず気がつきます。
そして、「自分を変えたい。自分を成長させたい」という切なる願いを持ちます。
自分のためだけだったら到底持ち得ないような強烈なモチベーションを、わが子のためなら持てるのです。
これ以上尊いモチベーションがあるでしょうか?

そして、日々の努力が始まります。
親にとって、子育ては自分育てそのものです。
ひととして、これ以上得がたい機会はありません。

それは、手の指で髪の毛を洗うのと同じです。
髪の毛を洗ったとき、一番きれいになるのはどこでしょう?

シャンプーをつけて手の指で髪の毛を洗い、リンスして水で洗い流せば、髪の毛と頭皮がきれいになります。
でも、そのとききれいになるのは髪の毛と頭皮だけではありません。

実は、手の指が一番きれいになっているのです。
十万本の髪の毛を洗う、その最中に、洗っていたはずの指先がそれ以上に洗われているのです。
十万本の髪の毛によって!

子育てもこれと同じです。
子どもとの十万回のやり取りが、あなたを磨いてくれるのです。
この得がたい機会を活かして、子どもと共に成長していってください。

目に見える変化がないときもあるでしょう。
そこでは忍耐が必要です。
それは、上り坂と同じです。
上に上がっていくのはたいへんなのです。
でも、そこで引き返しては元の木阿弥です。

忍耐を学んでください。
変化が見えなくても続けてください。
方向性が正しければ、やがて新しい景色が見えてきます。
坂を上りきれば、あなたの前に見たこともない景色が広がります。

あなたに、心からのエールを贈ります。

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