第40回 ありのままを受け入れてもらえると、子どもは素直になる
私は教師だったときから今に至るまで、ずっと日記をつけてきました。
文章化するとたいへんなので、キーワードでつけることが多かったです。
以前は市販の「十年日記」につけていましたが、今はパソコンでつけています。
今回は、教師時代の日記から、子どもたちのおもしろいエピソードをいくつか紹介します。
帰りの会が終わった後で、1年生のY君が私のところに来て言いました。
「ぼく、明日から3連休でオランダに行ってくる」
「えっ、3連休でオランダ!?(あり得る?)」
「そう、すごく楽しみ」
「いいな〜、楽しんできてね」
3連休が終わった月曜日、登校してきたY君に聞きました。
「どうだった、オランダは?」
「えへへ、オランダだと思ったらちょっと違った」
「えっ、じゃあ、どこに行ってきたの?」
「五反田(ごたんだ)」
「えらい違うじゃん」
「ちょっとだよ」
これは、日記に「Y君、3連休、オランダ、五反田、笑える」と書いてあるので思い出せるわけです。
次は、6年生の2学期に転校してきたK君のお話です。
歴史の授業のときのことです。
私「さあ、今日から室町時代の勉強だよ」
K君「先生、おれ、前の学校で室町時代まで勉強してきたから得意」
私「えっ、進み方が早いね」
K君「だって、前の学校の教科書では室町時代が鎌倉時代の前になってたよ」
ほかの子「え〜、すごい、いいな〜」
私「……(なにがいいのかな?)」
次は、1年生のFさんのお話です。
F「先生、私、昨日M君に変なこと言われたから、今から「うっふん」をはらしてくる」
私「えっ?「うっふん」じゃなくて「うっぷん(鬱憤)」でしょ」
F「そうじゃないよ。「うっふん」だよ」
私「「うっぷん」だと思うけどな〜」
F「だってお母さんに「うっふん」のはらし方教わったもん」
私「どうやるの?」
F「M君のところに行って、にらみながら「う〜っ」て言って、最後に「ふん」ていうんだよ」
私「……(お母さん、変なこと教えたね)」
次は、2年生のN君とS君のお話です。
生活科見学で、みんなで電車に乗って動物園に行ったときのことです。
N君とS君は、電車の一番前の車両で運転席のすぐ後ろに乗っていたので、進行方向の線路がよく見えました。
N君「線路ってすごいな、どこまでも続いてる。線路の下にある木もずっと続いてる。こんなにすごいの、誰が作ったんだろう。猫だったらおもしろいな」
私「……(なんで猫が出るんだろ?)」
S君「そりゃあ人間でしょ。猫が作るわけないじゃん」
N君「え〜、なんで、もしかしたら猫が作るかもじゃん」
S君「猫が作るわけないじゃん」
N君「わかんないじゃん、もしかしたら作るかもじゃん」
S君「イヤ、猫は絶対作らない。犬だったらもしかしたら作るかも知れないけど、猫は作らない」
私「……(みょうに説得力があるな)
ところで、私も、若いころはこのような子どもたちのおもしろさを味わうことができませんでした。
心に余裕がなかったからです。
なぜ余裕がなかったかと言えば、「こうさせなければ」「これができるようにさせなければ」などの思い込みが強過ぎたからです。
つまり、自分が描いたイメージを子どもに押しつけることばかり考えていたのです。
当然、口にする言葉も、「なんで○○しないんだ」「○○しなきゃだめだろ」などの否定的な言い方が多かったわけです。
でも、ある時から考えが変わりました。
自分のイメージを押しつけることをやめ、子どものありのままの姿や気持ちを理解し受け入れることを大切にするようになりました。
当然、口にする言葉も共感的な言い方が多くなりました。
同時に、心に余裕が出てきて、子どもたちのおもしろさも味わえるようになりました。
「くもりのない目で見れば、こんなにおもしろい人たちはいない」と気がつきました。
そして、子どもたちとの関係が、今までにないくらいうまくいくようになりました。
ありがたいことに、子どもたちが素直に言うことを聞くようになったのです。
みなさんも、ぜひ、「こうさせなければ」「これができるようにさせなければ」などの強い思い込みから抜け出してください。
そして、自分のイメージを押しつけることをやめ、子どものありのままの姿や気持ちを理解し受け入れ共感することを大切にしてください。
そうすると、不思議なほど心に余裕が出てきます。
そして、万事うまく回り始めます。
「今までの苦闘は何だったのか?」と感じるようになります。
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