- 「大葉ナナコさん」バースコーディネーターとして活躍。私生活では2男3女の母。日本誕生学協会 代表理事。URL:http://www.tanjo.org/
【CASE9】「どうして大人は毛が生えているの?」と聞かれたら
「大人になった証拠だよ」だけでいいの?
子どもと一緒にお風呂に入るのは、だいたい小学4〜5年生まで、という親御さんが一番多いのではないでしょうか。
さて、子どもと一緒にお風呂に入っているときの代表的な質問といえば、「大人はなぜ、腋の下や性器に毛が生えているの?」です。あなたはどう答えていますか?
日本は20歳から成人として認められる国。どうして毛が生えるかを聞かれて、「大人になったら生えるのよ」だけでは子どもは納得がいかないもの。実際に腋の下や性器に生える性毛は、第二次性徴で卵巣や精巣が発達する時期の12〜13歳くらいから見られるでしょう。戸籍年齢の“大人”よりずっと早いのですから、「大人になったら生える」では子どもは混乱します。
小学校3〜4年生が聞いてきたら、きちんと答えてあげないと、実際に体が変化してからでは戸惑うばかりです。
では実際にはどのように教えてあげるのが適切でしょうか。
自分の子どもに合った言葉をつむぐ
まず、子どもから聞いてきたときがチャンスですから、聞きたくなったきっかけや理由を知ることは大事です。「どうして知りたいと思ったの?」と、聞いてきた動機についてたずねてみましょう。
お子さんが小学4年生前後であれば、「学校で、月経のしくみや男子の精通のことなどは習った?」と聞いてから、「人間の子どもは10歳くらいから、いつか家族が欲しいなと思ったときのために、赤ちゃんのいのちを作る準備を始めるのよ。その準備ができると、性器に毛が生えてくるんだよ」と教えてあげましょう。
高学年のお子さんであれば、「月経のサイクルなどによって性ホルモンが分泌されるようになると、体は特有の匂いを出すようになるんだよ。性毛には、その匂いが体に残りやすいようにする役割があるんだよ」とフェロモンの仕組みについて話してみるのもいいかもしれません。
実際に生え始めたという報告があったら、男子なら「かっこいい!そろそろ、大人の体になる準備が始まるね」。女子なら「ますます、体を大事にしなくちゃね」などと、セルフケアを訴えかけていきましょう。
自分のお子さんの発達に合ったサンプルを出しながら、伝えてあげるとよいです。
わが子の専門家は親
性教育という言葉がありますが、「家庭科」や「理科」のように「性教育科」はありません。学校では、第二次性徴の体の発達についてだけを説明することを指していることも多く、学校ごとに方針が違います。性のことを子どもに伝えるのにはマニュアルはなく、ひとりひとりの親御さんが第一責任者です。わが子用の「この言い方が一番」という黄金のフレーズがどこかにあるわけではありません。
すべての子どもは違う子どもであり、心身の発達や聞いてくる動機も違います。親は、第二次性徴をどのように説明するか、自分の中でも知識を整理し、喜ばしい成長なんだと伝える心の準備が必要です。
そのために、「どうして性毛が生えてくるか?」というテーマは、とてもいい練習になると思います。子どもが自分の成長を楽しみに感じ、自分の体を大事にしてくれるよう、言葉を組み立てていきましょう。
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