「孤食」がまねく、性行動の低年齢化
欠食、孤食、団らん不足…孤立する子どもたち
食育という言葉がすっかり市民権を得た今日、学校から配布される保護者向けのお便りには「きちんと朝ごはんを食べましょう」とわざわざ書かれる時代になっています。朝ごはんを食べないばかりでなく、夜ごはんも、とても食事とは呼べないものを食べている子どももいるそうです。孤食の子は、性行動開始年齢も早いのです。今、何ができるでしょうか。
05年7月から施行された食育基本法に基づいて、06年度には「食育白書」が政府から出されました。朝食をとらないケースを「欠食」、1人で朝食をとるケースを「孤食」とネーミングし、食事内容の劣化のみならず、食生活全体が心身の成長を悪化させると警鐘を鳴らしています。
朝食を食べない子ども(04年度調査)は、10代後半が12.4%、1〜6歳で5.4%、7〜14歳で3%いることが明らかになりました。国立教育政策研究所の調査(03年度)をもとにした白書で、「朝食をきちんととる子ほどペーパーテストの得点が高い傾向にある」という発表があったのは、記憶に新しいことと思います。
朝食を1人でとる子ども(05年度調査)は、小学生で20.1%、中学生では41.6%にも達し、惨憺たる数字が出されています。
朝食だけでなく、夕食を1人で食べるのも「孤食」と表現されるべきでしょう。
夕飯を1人でとる子どもはどれくらいいるのでしょう。家族が家の中にいても食べる時間がそろわなかったり、一緒に食べたいという気持ちがないのは問題です。毎日家族で夕食をとっているという子どもは、04年の調査によれば25.9%となっています。76年は、「毎日」という子どもが36.5%だったというので、30年間で10%も減っていることになります。その代わり、週に2〜3回家族がそろうという子どもは36.3%(04年)で、30年前に比べると約10%増えています。
パリの父親たちの42%の人が、毎日家族で夕飯をとると答えています。イタリアでも「愛することと食べることが生きること」というほど、家族とはともに笑い、ともに唄い、ともに食べる人たちであるという考えがあります。
このまま日本の家庭で孤食が進むとどうなるかというと、「テレビを見ながらの食事や箸を正しく持てない子どもの増加など、食事のマナーにも影響してくる」と内閣府食育推進室は分析しています。マナーだけの問題でなく、栄養バランスの偏りの問題もありますし、家族の団らんがないことは、子どもの将来に計り知れない影響を与えるでしょう。
心がペコペコな子は性行動であたためる?
このままだと他者とコミュニケーションしながら食べることが苦手な「会食恐怖症」の子が増えるのではないかと言われています。
性行動を開始するのが早い子どもたちのライフスタイルを見ると、夕食は1人でとるという子が圧倒的です。あたたかい夕食を一緒に食べる家族がいなければ、同じ境遇の子どもたちが集まり、ファーストフードなどを一緒に食べたがるのも無理もありません。性行動開始の低年齢化は、いずれ望まぬ妊娠や人工妊娠中絶、性感染症になってしまうのです。性に対する知識さえ与えていればよいということではなく、子ども自身の心のエネルギーや自尊感情が必要なのです。
栄養のある食事が用意され、あたたかいまなざしを向けられ、「今日はどんなことがあった?」と話ができるような心温まる場がない子どもは、他の子どもとあたためあうしかないでしょう。心もからだも胃袋も。
低年齢で性的に欲求が高いということは、早く大人になる必要性を感じているということであり、子ども時代を子どもとして過ごせない叫びとしてとらえられるのではないでしょうか。子どもが早くから自分をあたためてくれる異性を探すのは、大人のあたため不足に他なりません。
会社の残業で帰れない、子どものために働いているというご家族も多いでしょう。しかし、子どもが子どもでいてくれるのは人生のほんの数年。パリの父親たちは週35時間労働とされていますから、ワークライフバランスがとれて、家族を大事にすることができるのです。日本も、子どもを持つ家庭の働き方を改善する時が来ています。さあ、家族がそろったあたたかい食卓を子どもにプレゼントしましょう。いつか子ども自身があたたかいエネルギーが循環する家庭を持つためにも。
(バースコーディネーター・大葉ナナコ)
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