現代子どもの気になる性事情「性の低年齢化」はどこまで進んでいるのか?子どもを守るために、親として知っておきたい、現代の性事情を取り上げます。

“性同一性障害”をどう考える?

“性同一性障害”とは?

性同一性障害は、簡単に言えば自分自身の認識している自分の性(性自認)と、身体の性的特徴が一致しない場合を指します。数年前にテレビドラマの「3年B組金八先生」で、女優の上戸彩さんが性同一性障害の中学生を演じ、広く認知されるようになりました。
“性別”とひとことで言っても、身体的にも精神的にも性別を決める要素は多様です。身体的には外性器の形のみならず、内分泌(ホルモン)バランスや脳の構造など、10項目以上にもおよぶ機能の中から、女性か男性かが判断されるといわれています。
半陰陽(はんいんよう)といわれる、外性器の形が男性か女性かの区別ができない身体形状を持つ人もいます。さまざまな要素から性別は決められますが、性自認ができていない幼少期のうちに外性器の形状だけで性別を決め、思春期に自分のからだと心理学的性別が違うと苦しむ場合もあります。女子だと思って育てられ、本人も自分を女性だと思って過ごし、思春期に月経が始まらないことから内性器を調べたら男子だったということなどもあるようです。

『世界がもし100人の村だったら』というベストセラーには、「世界がもし100人の村だったら、15人が同性愛で85人が異性愛」というくだりがあり、その想像以上の多さに目から鱗が落ちる思いでした。100人の村で15人が同性愛という数値が出ているということは、異性愛が絶対的なものであるということではないわけです。日本でこれから成長する少年少女も、15%は異性よりも同性をパートナーに望む可能性があるということです。大人たちが現状を把握し、本人たちを傷つけることなく、多様さを理解することは大切です。

子どもたちに伝えたいこと

性同一性障害は、同性愛や半陰陽とは違います。社会的な性の役割をジェンダーといいますが、性同一性障害は英語では「ジェンダー・アイデンティティ・ディスオーダー」といいます。
半陰陽と区別される点は、生物学的に外性器などの身体形状や内分泌環境は、明確に男女どちらかに属す身体であるということ。その身体的な性と自分で認識している性とが相反する、つまり完全な女性の身体形状で月経もあるけれども、精神面では自分は男性であるというアイデンティティがある状態を指します。

性同一性障害が語られるとき、性自認は「男性か女性か」という選択肢が基本です。しかし現実に医療の現場では、性自認が中性や無性、それ以外の人も存在するといわれています。社会では「男性か?女性か?」という二分律が多数になっているため、マイノリティ(少数派)は非常に生活しづらくなるとされています。このような社会で暮らしていくために、男性もしくは女性としての性役割を演じることとなるのは、当事者にとってはとても苦しいことでしょう。思春期の子を育てる大人たちは、子どもたちが将来、さまざまな性アイデンティティの人々とも共存できるように、多様性理解のセンスを高めておいてあげたいものです。

性同一性障害のある人の異性愛・同性愛は、本人の性自認によるものですが、一般の男女と同じように異性愛、同性愛の数でいうバランスは同じです。今でも性の相手は異性でも、異性の服装をすることを好む「異性装者」も多数存在します。一般的でないからといって、マイノリティのアイデンティティを持つ人々が暮らしにくくなったり、差別を受けたりする社会は、人間的ではありません。次世代の子どもたちこそ異文化共存の感性を育むべきでしょう。

「性同一性障害特例法 平成15年7月16日法律第111号」は、性同一性障害者のうち特定の条件を満たす場合、家庭裁判所の審判を経ることによって法令上の性別の取り扱いを性自認に合致するものに変更することを認めました。 性同一性障害特例法・性同一性障害者特例法、あるいは単に特例法とも呼ばれ、2003年(平成15年)7月16日に施行された、戸籍上の性別記載を変更できるものとした日本の法律が生まれたわけです。 性同一性障害は自分の子どもにも起こりうることですし、今後子どもが出会う大切な友人がそうかもしれません。どんな場合でも、個人個人が他者の性に多様性を受容し、尊重する社会が望ましいでしょう。 (バースコーディネーター・大葉ナナコ)

バースコーディネーターとして活躍。私生活では2男3女の母。 日本誕生学協会 代表理事。 URL:http://www.tanjo.org
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