「知識だけの子」にしない教育法
『常識に関する問題』にはどんなものがある?
今回は、『常識に関する問題』について。文字通り、常識の分野です。
しかし、単なる知識ではなく、情操教育の領域から思慮分別まで含まれています。仲間分け、郵便屋さんとポストを結びつけるなど職業に関するもの、道具や日用品の名称と用途に関するもの、季節と行事に関するもの、公衆道徳やしつけに関するもの、むかし話や名作物語の一部が描かれた絵を見て説明するものなどがあります。
仲間分け
動物や昆虫、木や花、野菜や果物、乗り物、季節、文房具などの仲間を探したり、逆に仲間ではないものを見つける問題です。
常識の問題だけではありませんが、単に〇や×をつけて「満点!次に行きましょう!」では、あまり有効な学習とはいえません。○や×をつけた理由を、自分の言葉できちんと説明できるか確かめましょう。繰り返しますが、自分の言葉で話せることが、とても大切なのです。
こういった問題がありました。
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◆(かき・くり・ぶどう・なし・すいかの絵が描いてある)
かき・くり・ぶどう・なし・すいかの中で、仲間ではないものに×をつけなさい。
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お母さん方は、何に×をつけますか。聞き手に徹してみると、子どもたちは実にユニークな発想の持ち主であることがわかります。
「すいかに×です。すいかは野菜で、他はくだものです」
常識的な模範回答で、お母さんは喜びます。
「すいかです。他のくだものは木になるけど、すいかは地面になります」
すいかは木になりません。見た経験があるのでしょう。
「すいかは、夏に食べますが、他は秋ですから、すいかに×です」
季節できました。季節感が希薄になっているのに、偉いですね!
「すいかです。他は皮をむいて食べます」
またしてもすいかですが、おもしろいです。食べ方の違いを見つけました。
「くりです。イガイガに入っていますから、手で触れません」
くり拾いに行ったことありますね、この子は。
「くりです。そのままでは食べられません」
いいですね、くりご飯が好きなのでしょう。もしかしたら、生のくりをかじったことがあるのかもしれません。
「ぶどうです。他は1個、2個と数えるけど、ぶどうはそういうふうに数えません」
これもいいですね。1房などといえなくても正解です。小学生になったら、有島武郎が自分の子どもたちのために書いた『一房の葡萄』を読ませてあげたいですね。
「くりです。種がありません」
ぶどうやすいかにも種のないものがありますが、これも正解ですね。
「かきとくりです」
「…?」
「『さるかに合戦』には、かきとくりが出てくるけど、むかし話に他のものは出てくるかな?」
さて、こうなるとわかりませんが、ぶどうとなしの出てくる話は思い浮かびません。
すいかはあります。老人が、意地悪をした商人から魔法を使ってすいかを取り上げてしまう話で、今昔物語にも出ています。
しかし、いいですね。発想がユニークで私は好きですね、こういう子は。むかし話をたくさん読んでもらっていると思います。
どうでしょうか、お母さん。こんなにたくさんの違いを見つけます、子どもたちは。これは、たいへんな学習になっています。子どもの観察力や発想は、大人と違うことがよくおわかりいただけたと思います。
×をつけて終わりでは、あまり効果的な学習とは言えません。子どもの発想に耳を傾け、そして最後に『くだものと野菜』『季節の違い』など設問の意図に従い、正解に導いてあげましょう。
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