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家庭菜園やソバ打ちだけ?
団塊の世代にこそできること

大切なのは、家庭での教育

【世界の名言】
  教育とは、容器を満たすことではない
  燃料に火をつけることである
  (ウィリアム・バトラー・イェーツ)

  Education is not the filling of the pail,
  but, the lighting of the fire.
  ( William Butler Yeats, Irish Poet (1865-1939) )


ノンフィクション作家の山根一眞さんが、母校である獨協大学を久しぶりに訪ねたときのことです。
新装されたミニ博物館「獨協歴史ギャラリー」には、初代大学学長だった天野貞祐先生の自宅書斎が移設、展示されていました。カント哲学者の天野先生の書棚をながめていた山根さんは、書棚に収められていた本の内容に驚かされます。

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思い知らされた家庭教育の重要さ――ノンフィクション作家・山根一眞
【「デジタルスパイス ▼▽545」07.11.03日経新聞(朝刊)】
http://www.yamane-office.co.jp

(前略)
…何よりも驚いたのが、書棚三段分の子供の本だった。

『無名の偉人』『私の社会見学』『憲法と君たち』『数と社会』『エルサレムの丘』『手紙の教室』『私の昆虫記』『友情』『十人の発明発見』『顕微鏡下の世界』『歯車ものがたり』『ハムレット』『ラーマーヤナ』など、分野は多岐にわたる。

なぜ、子供の本がと不思議だったが、「天野先生がお孫さんに読んであげたものだそうです」と聞かされた。これにはショックを受けた。私は書斎での仕事術の本をずいぶん書いてきたが、子供に与える知的機能は欠如していた…。

子供たちの望ましい教育はどうあるべきかを、私たちは学校のありようばかりに目を奪われてきたが、家庭での教育の大事さを思い知らされた。団塊の世代の退職後のライフスタイルがあれこれ提唱されているが、「おじいさん、おばあさんが孫に与える家庭教育」が語られることはなかった。定年退職後の世代が担わねばならぬ大事な義務のあることを学びました。
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山根さんの驚きは、『家庭菜園』や『ソバ打ち職人』しか頭にない団塊の世代に対し、本来果たすべき重要な役割があったことを覚醒させてくれます。多くの絵本や児童書を孫に読んで聞かせたいと思います。それが世代を超えて心がつながっていくということなのでしょう。

おじいさん、おばあさんが孫に接するときに忘れてならない重要な心得があります。私はそのことを梨木香歩さんの小説『西の魔女が死んだ』から学びました。

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『西の魔女が死んだ』
【 梨木香歩、新潮文庫、p49 】

後片づけを済ますと、おばあちゃんは今日つくったばかりのジャム瓶のいっぱい入った段ボールを抱え、まいは紙やはさみの入った箱を持ってリビングルームに移った。
そこで、テレビを見ながら、日付やジャムの名前を書いたラベル張りをした。おばあちゃんのラベルは、長方形の何の変哲(へんてつ)もない紙に黒いペンで書いただけのシンプルなものだったけれど、まいのは長方形の四角(よすみ)を落として八角形にしたり、色鉛筆を何本も使って縁取ったりした美しいものになった。
「まいはセンスがありますね。これなんか本当にきれいね。組み合わせる色の配色もよく計算されているのね」
そう言ってまいの頭をなでながら、
「感性の豊かな私の自慢の孫」
と、独り言のように呟いたので、まいは大いに照れてしまった。おばあちゃんにはそういう、誰はばかることなく身内をほめるところがあった。そして自分がそれを誇りにしていると、まるで植物に水を遣るかのように、さりげなく伝えるところも。
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