親は子供の下僕になるな!
子供をダメにしてしまっていませんか?
▼フリースクールとは何か
もとより私たちのフリースクールは少年院や感化院(その後、救護院→児童自立支援施設)ではない。以前、戸塚ヨットスクールという人の隷属化を目的とする矯正施設のような団体があって(どこかの知事が支援する会の会長を勤めていたのは驚きだった…)、子ども達をまるで家畜か野生動物のように扱い、死者まで出すに至って社会問題化したことがあったが、子ども達をただ更生させなければならない問題児や犯罪者とみなすようなフリースクールはまともではない(しかし、今でもそういう施設を求める多くの親御さんがいるのが現実のようだ)。
また、フリースクールというところは問題児の収容施設でも隔離施設でもない(でも、病院も学校もどこか犯罪者を収容する刑務所のような施設に似ているような気がする。建物のイメージから来るのだろうか、機能から来るのだろうか)。
▼包み隠さず話し合うこと
だから、フリースクールで引き受ける場合には、それなりの時間をとって十分に話し合い、情報や意見を交換し合い、さらに体験入学も行い、両者が納得の上で(一番の決め手は、本人がここでやりたいということ)初めて入学の手続きとなる。だから、フリースクールの側もご家庭の側もまずは求めることを包み隠さずに話し合うことがとても大切だ。
私たちは単に子どもを引き受けるだけでなく、その子がここで疲れや傷を癒し、やがて自分の足でしっかりと立ち、自分の翼で力強く羽ばたいて行くことを願っている。そういう社会人になるための自立支援の学びと活動の場として私たちのフリースクールがある。
▼子どもの下僕を演じる親
ところが、「弱い我が子を守る」「傷ついた我が子を保護する」という強い思いが、逆に親御さんの子どもへの対応を見誤らせ、思わぬ方向への展開を招くことがある。幸いにして、フリースクール・ぱいでぃあに救いを求めてくるご家族はマスコミをにぎわすようなネグレクトや虐待のケースはまずない。
しかし、子ども可愛さからなのか子どもを不憫だと思うからなのか、「子どもの意思を大事にしたい」と思うあまり、子どもの言いなりになり子どもの下僕のように振舞ってしまうケースがないわけではない。そうなるとそこに、尤もであろうと理不尽であろうと、親は自分のことは何でも聞いてくれると見抜いて幼児性の万能感に浸りきる子どもと、子どもの言うことには何でもはいはいと行動してしまう今流行のメイドか執事(コンシエルジュ)のような親、という主客が転倒した奇妙な関係が出来上がるのである。
▼子どもを尊重するということ
ここで子どもはあたかもお姫様か小皇帝かのように振舞い遇される。そして、親や保護者は本来自分達が果たすべき責務やプライドをとうに失ってしまっている。その行動の基準となっているのはただ「子どもがそう言うから」「子どもがそう望むから」ということ。
ちょっと聞くと、子どもの言動を尊重するという原点に立った物言いのようにも聞こえる。親として非の打ち所がない返答のようにも聞こえる。が、果たしてそうだろうか。こうすれば本当に子どもは次代を担う人間として心身ともに健やかに育つことができるだろうか。逆ではないか。昔から「かわいい子には旅をさせよ」と言ってきたのは単なる言葉の綾ではないだろう。
▼子どもをダメにする方法
ここには社会人としては未完成の未成年の子どもを養育するという親としての最も重要な観点が抜け落ちている。生物学的な営みの結果として親とはなったが、我が子に人として生きていくために必要な教育を施すという歴史的社会的な親としての義務を完全に放棄している。まだ人として未成熟な子どもに、意のままにさせていたらどうなるか。子どもは今の年齢でわずかに判断できる興味や関心の小窓を通して世間を眺め、易きに堕した気ままな選択をするだけだろう。これは「子どもをダメにする最良の方法」と言われていることと同じである。それは「子どもの言うがままに、要求のままに行って、要求する物を与え続けること」だという。その分だけ、子どもは自分の手足や頭脳を使って努力することを厭い、自他に挑戦するチャンスをみすみす捨てているのである。たとえば、「リンゴの皮も向けない子ども達」はこうしてつくられる。
▼変わりようのない自分に気付いた時
これはこれで、子どもの興味や関心、子どもの存在そのものを商品化しようとする大人の格好のターゲットになっている現実がある。これは逆の意味で立派な子ども虐待のようにも見える。このような育ちをさせられた子ども達は、後で自分の無力感や無能力感に苦しむことになる。でも、子どもが自分でそれに気付いた時にはもう遅い。「人はいつでも変わり得る」というのは半分真実であり半分は偽りである。このような場合には、もう容易には変わりようのない自分を発見するだけである。
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