ほめるだけではない、モチベーションの上げ方
事実をそのまま伝えるだけでもよい
1 "ごほうび"ではない認め方
前回、ほめることの弊害についてお伝えしました。ほめることは悪いことではありません。
しかし、多用すると「自分がやりたいからやる」ではなく「ほめて欲しいからやる」にすり替わる恐れがあります。
ほめられることは、脳にとってはごほうびをもらうのと同じような効果があるからです。
「ほめる」に似たアプローチに、「承認」というスキルがあります。
相手に評価を加えない認める方法です。
評価しないことで、何が違ってくるのでしょう。
2 存在を認める・存在承認
承認には2つの種類があります。存在承認と行動承認です。
まずは、存在承認についてお話します。
存在承認とは、「子ども自身の存在を認めること」です。
そう書くと、難しいことのようですが普段していることばかりです。
・名前を呼ぶ
・あいさつをする
・頭をなでる(スキンシップ) など
「あなたの存在を気にかけていますよ」というサインです。
学校教育では、基本中の基本。
ご存知の通り、これらがあるかないかで学校の雰囲気は、ずいぶん違います。
私が中学・高校の頃、授業中に名簿を見ずに私の顔を見て指してくださる先生には、信頼感を持っていました。
「前から3番目の…そこの人!」と、名前も呼ばず指名する先生もいました。
やる気まで失せたのを思い出します。
自分に関心を持ってくれている、と感じるだけで、子どもたちの心持ちが違ってきます。
3 事実をそのまま伝える・行動承認
次に、行動承認についてお話します。
行動承認とは
「子どもの行動面に目を向け、変化、成長、成果などに気づきを伝えること」
です。
評価を加えず、事実をそのまま伝えます。
★ 見たままを伝える
「髪型を変えたね」(承認)
「すてきな髪形になったね」(ほめる)
*髪型を気に入っているとは限りません。どちらが受け入れやすいでしょうか。
「毎日、運動場を走っているね」(承認)
「毎日運動場を走っていて、えらいね」(ほめる)
*はたして、その子はほめてもらいたくて走っていたのでしょうか。事実を伝えるだけでも、十分に気持ちは伝わります。
★ 違いを伝える
「さっきは3回しか跳べなかったけれど、今度は7回も跳べたね!」(承認)
「わ〜、すごーい!上手になったね」(ほめる)
*どちらが、より自分の成長を感じられるでしょう。
「集合が前より早くできるようになったね」(承認)
「○組より集合が早くできたね。えらい!」(ほめる)
*他と比較して評価すると、何が行動の動機や基準になっていくでしょう。
★ 結果ではなく、プロセスを重視する
「結果は3位だったけれど、一致団結して練習に取り組んでいたね」(承認)
*結果だけ誉められたり、叱られたりするのと、感じ方はどう違うでしょう。
★ 気持ちを伝える
「ゴミを拾ってくれて、ありがとう。教室がきれいになって気持ちがいいね」(承認)
「いい子だね!えらいなあ」(ほめる)
*今後ゴミを拾うとき、内発的な動機につながるのは、どちらでしょう。
4 承認のよさ
承認には「ほめる」にはないよさがあります。
まず、「承認」はありのままを伝えるのでバリエーションが豊富です。
見たまま、感じたままを言えばいいのですから。
反対に「ほめる」のボキャブラリーは少ないです。
「すごい!」「えらい!」「いい子!」「上手!」…
あまり ありませんよね。
また、ほめることは悪いことではありませんが、承認と比較したとき次のような点で異なっています。
・何をほめられているのかよくわからない。
・評価をされることで、上から目線を感じる。
・場合によってはおだてられたように感じる。(コントロールを感じる)
・行動の動機が「ほめられたい」につながりやすい。
承認は、事実や感じたことをそのまま伝えます。
評価が入らないので、上から下に 見下ろすのではなく、同じ目線から話している印象になります。
子どもを認める機会を多く作りたいと感じたとき、ぜひ承認も取り入れてみてください。
「先生は、あなたのことをよく見ていますよ」という気持ちがより伝わることと思います。
5 まとめ
★ 承認は、評価を加えない認め方。
★「存在承認」と「行動承認」がある。
★ 事実をそのまま伝えるだけで、十分に子どもを認める気持ちが伝わる。
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